第二章 風のアルビオン
第二話 婚約者と決闘
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士郎の言葉に訝しげな顔をしたキュルケが聞いた。
「ああ、こういう時の予感は良く当たるんでな」
「ふ〜ん……そう、じゃあっルイズがワルドに押し倒されても知らないわよ」
「ぶっ! おっ、押し倒されるっ!」
キュルケの言葉に驚き慌てて振り返った士郎の眼前で、唖然とした顔をしたキュルケが言った。
「シロウ? あなたまさか……あたしが言ったことキチンと聞いていた?」
「あっ、ああ。聞いていたがまさかこういうこととは……」
「はぁ〜。もうシロウったら」
キュルケは士郎から離れると、風竜の背中でぼうっと星空を見ているタバサに向かって歩き始めた。
「少しぐらいはルイズのことも考えときなさいよ、ちょっとだけどルイズが可哀想よ……まっ、あの子もあの子だけど……ね」
「キュルケ?」
士郎が疑問の眼差しでキュルケの後ろ姿を見ていると、急にキュルケが立ち止まり、士郎の前にまで小走りに駆け寄っていく。
「キュルケ?」
士郎がキュルケを疑問の眼差しで見下ろすと、キュルケは悪戯っぽい笑みを士郎に向けた。
「これぐらいは役得よね」
そう言ってキュルケは背伸びをすると、士郎の頬にキスをした。
「―――っ」
「ふふっ、もちろんあたしのこともしっかりと考えなさいよ。それじゃっ、おやすみシロウ」
キュルケはそれだけ言うと、赤くなった頬を隠すように急いで風竜に向かって走り出した。
風竜が飛んで行き、屋根の上にひとり残った士郎は、キュルケのキスをした頬を押さえながら苦笑を浮かべた。
「……おやすみキュルケ」
翌日、士郎が『女神の杵』亭の廊下を歩いていると、羽帽子を被ったワルドが声をかけてきた。
「おはよう。使い魔くん」
「あはよう。ワルド子爵、こんな朝早くどうした?」
士郎の言葉にワルドはにっこりと笑った。
「きみは伝説の使い魔“ガンダールヴ”なんだろう?」
「……」
ワルドの問いに無言で答えた士郎は、向ける視線の中に探りの色を浮かべる。
「フーケの一件で僕は君に興味を抱いたんだ。それで調べているうちにわかったんだが……」
「……」
「あの“土くれ”から学院の宝を取り返したという君の腕が、どのくらいのものだか知りたいんだ。ちょっと手合わせ願いたい」
ワルドの申し出に、やっと士郎が口を開く。
「手合わせ?」
「ふふ、わかるだろう。つまり、これさ」
ワルドは腰に差した魔法の杖を引き抜く。
軽い口調ながらも、目が笑っていないワルドの顔に、士郎が口の端だけを曲げた笑みを向ける。
「やるのはかまわないが、どこでやる」
「この宿は昔、アルビオンからの侵攻に備えるための砦だったんだ
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