第二章 風のアルビオン
第二話 婚約者と決闘
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辛い、つらすぎるよ……ヴェルダンデ……」
主人のギーシュが落ち込んでいるというのに、薄情な巨大モグラの使い魔は、鼻をひくつかせ、くんかくんかとルイズに擦り寄っている。
主人に似て女好きなのか?
別段襲われているようにも見えず、士郎はどうしようかと考えながらルイズに擦り寄る巨大モグラを見ている。
「な、なによこのモグラ」
「主人に似て、女好きなんじゃない」
キュルケが苦笑いしながら言う。
確かにそうかもしれないなと皆が様子を伺う中、ヴェルダンデはルイズの身体を鼻先でつつき始める。
「ちょっ、ちょっと!」
何とか押し返そうとするルイズだが、奮闘虚しく哀れ巨大モグラに押し倒される。すわ、貞操の危機かと皆が鑑賞モードに移行する中、ヴェルダンデは鼻をクンカクンカと動かしながらルイズの体をまさぐり始めた。
「や! ちょっとどこ触ってるのよ!」
ルイズは体をモグラの鼻でつつき回され、地面をのたうち回る。スカートが乱れ、派手にパンツをさらけ出しながらルイズは暴れる。
巨大モグラから逃げるためとはいえ、あまりのルイズの醜態に、士郎が顔を片手で覆った。
見ている中気付いたが、どうやら巨大モグラの目的はルイズの貞操ではなく、その右手の薬指に光るルビーのようだ。必死にそこに鼻を擦り寄せる姿から見てとれる。
「この! 無礼なモグラね! 姫さまに頂いた指輪に鼻をくっつけないで!」
ギーシュが頷きながら呟いた。
「なるほど、指輪か。ヴェルダンデは宝石が大好きだからね」
「嫌なモグラね」
「嫌とか言わないでくれたまえ。ヴェルダンデは貴重な鉱石や宝石を僕のために見つけてきてくれるんだ。“土”系統のメイジのぼくにとって、この上もない、素敵な協力者さ」
宝石が好きなモグラか……凛が知ったら乱獲されて絶滅してしまうかもしれんな……。
宝石がナイナイと定期的に叫ぶ赤い悪魔のことを思い出し、表情が引き攣りそうになった士郎だが、軽く頭を振り、気を取り直すと、そろそろルイズを助けるかと、苦笑いしながらルイズの元に向かおうとし。
不意に後方に人の気配を感じた瞬間―――駆け出した。
士郎が駆け出すと同時に一陣の風が舞い上がる。風は不可視の鉄槌となりルイズとヴェルダンデへと襲いかかる―――が、直前に士郎が立ちふさがり、デルフリンガーを振るう。
「―――誰だっ」
士郎が風が向かってきた方向に向けて鋭く誰何すると、朝靄の中から一人の長身の羽帽子を被った貴族が現れた。
長身の貴族は、帽子を取ると一礼する。
「女王陛下の魔法衛士隊グリフォン隊隊長―――ワルド子爵だ」
「魔法衛士隊?」
ワルド子爵と名乗った男は、鋭い視線を弱めない士郎の様子を見ると首を振った。
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