第十話 幼児期I
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―――世界は豆に包まれたのだった。
「……いや、おっきい豆なし」
「えー」
「いやまじなし。うん、さすが童話だ。きちんと考えられているんだな」
「そうなの?」
「みー?」
「あぁ。豆が小さい理由が、お兄ちゃんわかったよ」
童話って意外に深かったことに感動した、午後の日のことであった。
******
「ただいま…、あらあら」
「あ、おかえりなさいお母さん。今日は早かったんだね」
嬉しそうにプレシアのもとへアリシアは歩み寄る。プレシアは娘の言葉にうなずきながら、リビングの奥の方へ目を向ける。そこには珍しく寝息をたてているアルヴィンが、お昼寝用の布団の中で丸まっていた。
「寝ちゃってるの?」
「うん、だからしぃーなの。お兄ちゃん、にゅるにゅるダンスの後にお豆の家族さんがミサイルになるのにびっくりして、その後リニスとけっとーして、ひでぶにされちゃったの。それで疲れて寝ちゃった」
「(……働いて私の頭脳。今こそ娘の言葉を全力で翻訳するのよ)」
お母さん頑張った。とりあえずいつも通りの日常だったのだろうと予想をつけた。合ってる。
2人で小声で話しながら、アルヴィンの寝顔を覗きこむ。いつもはっちゃかめっちゃかしているが、どこか大人びたところのある少年の顔は、年相応の幼さが見えた。プレシアはそれに小さく笑うと、息子の黒髪を手で優しく撫でていた。
「アルヴィンもリニスも元気よね…」
「でも楽しそうだよ」
「ふふ、そうね。リニスももう素直になったらいいのに」
そう言って、アルヴィンの隣で同じくすやすや眠る子猫に目を向ける。アルヴィンと一緒で疲れていたのだろう。お互いに寄り添いながら布団に身を寄せていた。
「2人とも意地っ張りなんだから」
「お兄ちゃんとリニスは仲良しだもんね」
「えぇ、家族ですもの」
プレシアは少しずれた布団をかけ直してあげながら、笑みをのぞかせた。
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