第五話
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「逃げてる最中は思考が定まらない場合もある。服装も確認できていなかった可能性もあるわ。それに……あの子……」
「どうしたんですか?」
「……なんでもないわ」
幽香は記憶の中からある少女を思い出していた。数年前に見つけた、人を癒す力を持った少女を。
だが、決め付けるのはまだ決め付けるのは早いだろう。今やるべきことに集中しないといけない。幽香は一度深呼吸して気持ちを整えていた。
「ところで……あの女の子、少し抵抗してるように見えるのだけど」
「……そうですね」
兵士に連れられている女の子は、どこかしら抵抗しているようだった。だが、高校生くらいの女の子と大人の男では、力に差がありすぎる。女の子は徐々に戦場へと引っ張られていった。
「まったく。乱暴にもほどがありますね」
「同感ね。どうする?」
「あの子が例のターゲットなら、能力を発動しますね。そうしたら、周りの兵士の殲滅と彼女の保護に向かいましょう」
「今じゃなくていいのね?まあ、どちらでもかまわないけど」
映姫達がそんな会話をしていると、女の子は喧嘩をしている兵士達の中央に立たされていた。女の子を連れてきた兵士は、何か命令を出しているそぶりを見せている。
女の子は怯えているようだった。軽く全身を震わせながら、弱弱しい表情を出している。男はそんな女の子を気遣うことなく、荒々しい声で命令を出している。
女の子は一度びくっと体を跳ね上げると、恐怖に満ちた顔をしたまま胸を両手で押さえて何かをし始めた。
「!?」
かすかではあるが、女の子は何かをつぶやいているように見える。それと同時に、女の子の両手が徐々に光を発し始めていく。
すると、映姫たちの体に暖かい何かがまとわりつく感覚が現れた。やさしく包み込む感覚は、別に害をなすような荒々しさは見受けられない。心の中が洗浄されていくようだった。
喧嘩をしていた兵士達にもそれは届いたらしく、なんともいえない感覚に戸惑っていた。自分が何をしていたのかを忘れたかのごとく、なぜ喧嘩をしていたかもわからなくなったみたいだ。
「敵が侵攻してきた!全員攻撃を開始せよ!!」
「敵襲……俺達はいったい……」
「ぐずぐずするな!!」
「りょ……了解!」
正気を取り戻した兵士達は、注意を反対側の戦場に向けていた。映姫たちから見れば、自分たちに目もくれず背後をさらしているみたいだ。
「もう……いいわね?」
「はい。始めてください」
「ええ」
幽香がにっこりと笑って返事をすると、何かをするそぶりを見せた。
「うわああ!?」
戦闘に向かおうとした
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