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銀河英雄伝説〜悪夢編
第三十八話 傍に置くのには理由が有るんだ
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ガラだろう。この二人、ブラウンシュバイク公には自裁を勧めるつもりだろうが、拙いな、俺を殺せとか言い遺しそうだ。まあ良い、大事なのはこれからだ。

「分かりました。では残された方々の事で少々御相談が有ります。アンスバッハ准将、シュトライト准将、卿らの協力が必要なのですが……」
二人がちょっと顔を見合わせた、フェルナーも訝しげな表情をしている。
『我々で出来る事なら』
シュトライトが答えた。
「実は……」



宇宙暦797年 7月 15日  宇宙艦隊司令部  アレックス・キャゼルヌ



昼食を食べ終わりラウンジでコーヒーを飲みながら寛いでいるとヤンの姿がラウンジの入り口に見えた。誰かを探すようなそぶりをしている。俺を見つけると真っ直ぐに近付いてきた。珍しく表情が険しい、それに早歩きだ。どうやら悪い事が起きたらしい。何が起きたかは大体想像がつく……。

ヤンが俺の正面の席に座ると直ぐにウェイトレスが注文を取りに来た。当然だがヤンは紅茶を頼んだ、残念だな、ブランデーが無くて。ウェイトレスが立ち去るのを見送りながら訪ねた。
「食事は済んだのか?」
「ええ」

「それで、何が起きた。ここまで追いかけてくるとは」
「追いかけたわけじゃありません、紅茶を飲みたくなっただけです」
「ほう、随分と険しい表情だが」
ヤンの表情が歪んだ。
「……第十一艦隊が敗れました。先程イゼルローン要塞のウランフ提督から連絡が……」

周囲には人が居なかったがヤンの声は小さかった。
「やはりそうか」
「損害は四割を超え五割に近いそうです」
「五割? 一方的だな、大軍にでも遭遇したのか、奇襲を受けたとか」
俺の問い掛けにヤンは首を横に振った。違うのか……。

「帝国軍は一個艦隊だったそうです」
「一個艦隊……」
「両軍は正面からぶつかったとか……」
互いに一個艦隊で正面からぶつかって五割の損害を出した? ルグランジュ提督はそんな無能な男なのか? これまで特に悪い噂は聞いたことが無かったが……。

考えているとウェイトレスが紅茶を持ってきた。ヤンの前に紅茶が置かれウェイトレスが立ち去るのを待つ。十分に離れてからヤンに問い掛けた。
「どういう事だ? 敗北は分かる、勝つ事も有れば負ける事も有るだろう。だが損害が五割? ちょっと信じられんな」
ヤンが一口紅茶を飲んで顔を顰めた。余り美味いと感じられないらしい。

「戦闘が始まった直後、帝国軍から通信が送られてきたそうです」
「……」
「捕虜の映像だったとか」
「捕虜?」
俺が問い掛けるとヤンが頷いた。

「官姓名と所属部隊、そしてどの戦いで捕虜になったかを告げたとか。それと家族への一言……」
「家族への一言?」
「ええ、“もう直ぐ帰れる”とか“皆元気でいる
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