閑話 アレスとの出会い1
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僕は何も言ってません。
喉の奥まで出かかった言葉の前に、サハロフが口を開く。
「ほう、そうか。スールズカリッター候補生」
「は、はい!」
「今の言葉は……事実か?」
「え。あ、ええと……ええ。アレスは帝国主義を称賛していません」
共和制を卑下をしたことは確かであるが。
心の中で、そう思えば、アレスがスーンを助けるように口を開いた。
「どちらも糞といっただけですよ」
ちょっと黙って欲しい。
思わず叫びたくなったのは、スーンだけではないだろう。
何も知らずに戸惑っていた周囲の人間も、そして遠くからこちらを楽しげに笑っていたフォーク達も、顔を蒼白にしている。
言い過ぎだと。
下手をすればクラスごとが巻き込まれかねない。
誰もを威圧する剣呑な瞳にも、アレスは一切怯む事はない。
先に言葉を出したのは、サハロフの方だった。
「その理由を聞いても?」
「帝国主義が悪いからといって、共和制が良いという事になぜなるのかわかりません。政治体制を選ぶにあたって、少しでもマシな糞を選んだのであって、糞が糞であると言う事には変わりがない」
と、言ってのけた後で、アレスは集中する視線に気づいた。
学生教官への真っ向からの反抗に、目をそらす者までいる。
その視線にようやく当人も気づいたようだ。
すまなそうに小さく頭を下げた。
「ああ、汚くて失礼。訂正する。糞ではなく、排泄――」
「訂正しなくてもいい。何度も聞きたい言葉でもない。それよりも君はわかっているのか。君のその言葉は政治体制を真っ向から反抗しているのだ、その立場の危険性が」
「誰がいつ反抗したというのです」
「いや、今でしょ! たった今」
サハロフの言葉にアレスがまるで心外だと言わんばかりに、目を大きく開いたため、隣で聞いていたスーンは思わず声に出した。
「あのな」
そこでアレスは深々とため息を吐いた。
まるで出来の悪い生徒に、頭を抱える教師のようだった。
頭を数度ほど叩いて、スーンを、そして、サハロフを見る。
「俺はどちらも駄目だとは言ったが、共和主義に反抗したつもりはない。どちらを選ばなきゃだめだというのなら、まだ共和主義の方がマシだとは言ったけどな。そもそも、君らは政治に何を期待している。誰もが幸せになる政治なんてあるとでも思っているのか。もしそうなら、それこそ病院で一度みて貰った方がいい」
アレスは肩をすくませ、小さく笑う。
嘲笑。
その笑いに対して、誰かが言葉を告げる前に――机が叩かれた。
一撃。集中する視線の中で、アレスの声はよく響いた。
「たった二人の人間が集まるだけで離婚やら絶縁やらと、何かしらの問題が発生する中で、共和制という名前だけで、なぜ何十億という
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