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「何ごともやってみなければ分からないのでは?」
言うや、エリザベスは噴水の前で分厚い財布を取り出す。
「500円硬貨に数えまして2000枚、占めて100万円からスタートでございます」
「待て待て待て。何でそんなに持って来てんだよ?」
「硬貨の量が、噴水の主の求めに満たなかったという可能性も加味しておりました」
ドバドバと500円玉を噴水に投入するエリザベス。
周囲の人間から奇異の目で見られているがお構いなしだ。
ある意味尊敬に値する振る舞いと言って良い。
「あ……! 投げ入れることばかりに夢中で、肝心の"願い"を考えておりませんでした」
「それならあるだろ? 答えが見つかりますようにってね」
「成る程、確かにその通り。その慧眼に敬意を」
感心したように頷き、祈りの姿勢を取り始める。
それはどこか神聖な雰囲気を醸し出しており、思わず息を飲んでしまう。
「では次へ参りましょう。裏瀬様、行きも気になっていたのですが……あの施設は?」
釣られて視線を向けるとそこには交番があった。
あそこの人間とはそこそこに縁がある、勿論悪い意味で。
「官憲の施設だ。で、そこに貼ってある写真にも興味津々みたいだな」
「ええ。指名手配、報奨金、討伐依頼の張り紙でしょうか?」
「いや違う。そんなことやれば逆に捕まっちまう。アレは情報提供だ」
その情報提供が正しくて、捕まえられたのならば報奨金が貰える仕組み。
そう、説明するとエリザベスは成る程と頷き、歩き出す。
疑問が氷解したのでもう興味はないのだろう。
「こちらの建物は……まさか、クラブ!?」
「何でそんな驚くんだよ」
「内なるパトスのままに踊る、そんな日常では許されぬ欲求を解放する光と音の地下庭園」
随分と詩的な言い回しだ。
そもそもそんな大した店ではないと言うのに。
「確かにそれも一側面としてあるが、酒を飲む場所でもあるんだぜ?」
「酒精を?」
「ああ。何なら入ってみるか?」
「今は閉まっておられるようですが……」
「俺なら問題ない」
どの道、エリザベスに遭わなければここに来るつもりだったし。
「あ? 今営業時間外……って裏瀬さんじゃないっすか。しかも女連れ、どうしたんすか?」
「暇だったから来たんだよ」
「そっすか。何か飲みます?」
俺は何でも良いが彼女は?
視線で促すと、希望があるようで少し前へ出る。
「私の名が冠された飲料があるとお聞きしました」
「はい? つか、お嬢さんの名前知らないんすけど……」
エリザベス、エリザベス? ああ、確かあったな。
「クイーン・エリザベスだ。ブランデーとスイート・ベルモットで頼む」
「うっす。んじゃ、カウンタ
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