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"、彼の御方に御助力を願おうと思っておりましたが……選ばれたのはテオ」
この意味の分からない言葉を理解する日が来るのだろうか?
そんな俺の疑問を余所にエリザベスは朗々と語る。
「諦めかけておりましたが、こうして似た性質を持つ御方に出会えました。これも何かの導きなのでしょうか?」
力と言う顔の側面に破壊と言う性質があるのは否定出来ない。
だが、それがどうしたと言うのだろう?
「いずれ、依頼をすることがあるかもしれません。その時は是非、御受け頂くことを願っております」
慇懃にお辞儀をするエリザベス、今気付いたがその所作には微塵の隙もない。
そうあろうとして振る舞えばある程度の隙は消せる。
だが、自然に消せるレベルとなると――――俺と彼女、彼我の実力差は察することも出来ない。
蟻と象くらいの差ならばまだ可愛いもの、そう思えるほどに開きがあるのは確実だ。
「……そんな余裕があったら、な」
「ええ、それで構いません」
「オーライ、ならその時は受けさせてもらうよ」
もう聞くことは聞けたし、収穫もあった。
このまま別れても良いのだが――――貰いっ放しは性に合わない。
「礼代わりだ」
あるいはシンパシーか、どちらでも良い。
「折角だから街でも案内してやろうか? 何、丁度暇してたとこなんだ」
「何と、御厚情感謝いたします。では、ポロニアンモールの案内をして頂きたいのですが……よろしいでしょうか?」
「ああ、良いよ。あそこらは庭みたいなもんだからな」
「ありがとうございます。ええ、あの辺りから出て来たのですが……一直線にここへ来たもので」
導かれるままに、か。
一体何がエリザベスを――いや、俺と彼女を導いているのか。
何時か俺は見えない繰り糸で操られていると考えたことがある。
エリザベスに絡まっている糸は、はたして俺と同じものなのか?
そんなことを考えながら俺は彼女を伴ってポロニアンモールへと向かう。
「命の源たる水をもてあそぶ、罪深きアート」
交番などが立ち並ぶ広場に来た途端、エリザベスが意味の分からないことを言い出した。
「出た時から気になっておりました」
「噴水が?」
罪深きアートと言うが、それは状況によりけりだ。
干ばつで苦しむ国などでは確かにそうだが、この国では何てことはない。
「ええ、その魔性ゆえに、硬貨を投げ入れた者の願いを叶えてしまうものまであるとか……」
「そりゃトレドの泉だろうよ」
尚且つ、それにしたって随分と限定的な願いだけだったはず。
何でもは叶わないと記憶している。
「そうなのですか?」
「そうだよ。それに、少なくともここでコインを投げ入れてる奴は見たことねえ」
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