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既知を踏破することだけしか考えていなかったんだ?
この既知の根源がどこにあるのかを、何故探そうとしなかったんだ?
既知の根源を探る――それはすなわち己のルーツを辿ることなのではないのか?
幾ら何でもこんな簡単なことを今まで思いつかなかったなんて、まるで……
「無意識にそこから目を逸らしていた?」
そう口にして冷や汗が流れ出す。
エリザベスはそんな俺を興味深そうに眺めている。
「何やら御答えに近づけたようで、同じ命題を求める者として祝福いたします」
深呼吸を一つ、これで少しは落ち着いた。
と言うより、この出会いが既知だったと気付いてしまったから取り乱さずに済んだのだろう。
俺はいつか彼女に今と同じ指摘をされて同じように冷や汗を流した。
それに気付いてしまうと、さっきまでの恐怖のようなものも滑稽に映ってしまう。
「そいつはどうも。なあ、ところで――俺達、どこかでこんな話をしなかったかな?」
口説き文句で言うならば百点中十点くらいか、だが口説くつもりはないので赤点でも構わない。
「どうでしょう? あなたは旅人、どこかで袖触れ合うこともあったのかもしれません」
「旅人?」
「私にはそう見えます」
周囲に人気がなくて良かったと思う。
道の往来でこんな電波な会話を繰り広げている光景など、出来るならば誰にも見せたくはない。
「どの辺が旅人に見えるんだい?」
「感じたままに言葉とさせて頂きました。私も、あなたが何者かなど存じているわけではありません」
「そうか。なあ、旅人とは言うが……俺はどこを、何の目的で目指している旅人だと思う?」
感じたままで良い、聞かせてくれとエリザベスに乞う。
先ほどまで感じていた暇など、とうに消え失せてしまった。
このやり取りは既知ではあるが、無視しては駄目だと俺の心のどこかが囁くのだ。
「感じたままを述べさせて頂けるのならば……」
「ならば?」
「"破壊"を目的とした旅路かと。何を壊すのか、あるいは総てを壊すのか――興味は尽きません」
破壊……それは、既知を壊すと言うことか?
いや、何かが引っかかる。
合っているようで合っていない、それも答えに含まれるが真実ではない。
そう思ってしまうのは何故なのか。
「抽象的だな。しかしまあ、感性と言うのは侮れんし……参考にさせてもらおう」
「お役に立てたのならば幸いです」
「ところで、外へ云々言ってたが……何でここらに? 見るものも何もないと思うんだが」
「心の赴くままにここへやって来た次第。きっと、こうやってあなたと言葉を交わすためだったのでしょう」
ともすれば口説き文句にも聞こえるが、そんな色っぽいものではない。
「私は"力を司る者
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