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っている健全な関係だ。
「……つっても最近は特に大きな抗争なんかもないがね」
切り込み隊長から抑止力へと変わり始めているのだろう。
「しっかし暇だなぁ……」
家に戻って酒をカッ喰らって寝るか、営業時間前のエスカペイドで飲んで寝るか。
それぐらいしかもう行動の選択肢がない。
そんな怠惰なことを考えていると、
「ん――蝶?」
青い蝶が窓の外から舞い込んで来た。
それはヒラリヒラリと俺の近くを踊るように飛んだ後で再び窓の外へと去って行った。
…………どうしてだろうか、あの蝶に惹かれるのは。
理屈など抜きに直感に身を任せるのが俺の常、気づけば部屋を飛び出して外に出ていた。
蝶はどこかと視線を彷徨わせていると、別のものを見つける。
「……ハイセンスだな」
全身を青でコーディネートした女が手で蝶を弄んでいた。
どこぞのイベントのコンパニオンにも見えるそいつは異常なまでの美女。
だが、それは天然の美しさではなく……そう、どこか作り物めいているように俺には見えた。
「はじめまして」
俺の視線に気付いたのか、女は軽く会釈をして近づいて来る。
人形のような美人さん、確かに作られたような美しさには目を惹かれるが……
「ハジメマシテ、お嬢さん」
それ以上に威圧感を感じてしまうのは何故だろう?
力と言う概念をそのまま詰め込んだかのような……いや、何を言ってるんだ俺は。
「私、あの方に選ばれず外へ出る機会を逸してしまいました」
「?」
「なのでこうして自ずから外へと出た次第。早速、良き出会いに恵まれたようですね」
…………分かった、コイツちょっとズレてる。
浮世離れしていると言うか天然と言うか……ちょっと言葉を交わしただけでも理解出来た。
だって、会話のキャッチボールが出来ていないのだから。
「私はエリザベスと申します。あなたのお名前を聞いてもよろしいでしょうか?」
「裏瀬だ。それで、エリザベスさんは……」
何者なんだ? そう問おうとして我に返る。
初対面の人間にそんなこと聞くなんてどうかしてるだろう。
内心で自分に毒づきながらエリザベスに視線を向けると、彼女は淑やかな笑みを浮かべている。
「私、自分が何者なのかをずっと探しております」
自分が何者か? 何とも奇妙な言い回しだ。
いや、あるいは哲学的とでも言えば良いのだろうか?
何にしてもエリザベスの目は真剣で、そこに偽りは一切感じられない。
「あなたもまた、私と同じように己が何者かを探し求めておられる御様子」
「俺は別に……」
追い求めてなどいない、そう言い掛けたところで言葉が解れてしまう。
…………そうだ、何故俺は今まで
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