暁 〜小説投稿サイト〜
私立アインクラッド学園
第二部 文化祭
第38話*君の為
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、俺をも圧倒させたり。
 華奢な体で繰り出す華麗な剣捌きは言葉にできないほどに凛々しいのに、普段は女の子らしい一面がある。
 そう、あの少女とは。

「アスナが、言ってたんだ」

 **

「……キリト君、どこにいるのかな」

 明日奈は校舎じゅう和人を捜し回り、息が上がっていた。

「パパ、屋上にいるよ」

 後を走ってきたユイが、高等部の屋上を指差す。明日奈は高等部の中庭から、屋上を振り仰ぐ。
 指の先には、和人の姿がある。屋上のテーブルの前の椅子に腰かけ、誰かと話している。
 ──いったい、誰と話しているのだろう。
 目を凝らすと、和人の隣に里香が見えた。

「……リズ」

 そう言えば里香は、和人に好意を抱いているようだった。
 ──もう、キリト君と付き合ってるのかな。
 そんなことを考えていると。

「……いい加減にしなさいよね!!」

 親友・里香の大声が聞こえた。
 明日奈に向けられたものだろうか、と一瞬ドキリとするが、どうやら和人に言っているらしい。
 里香はそのまま、屋上を去っていく。和人となにか揉めたのだろうか。

「キリト君……」

 今すぐ和人のもとへ行って、きちんと謝りたい。
 明日奈のことをどう思っていたかどうかはわからないが、傷つけてしまったのはきっと確かだから。
 思ってはいたけれど、ずっとこの足を踏み出すことができないでいた。
 ──もう、近寄ってこないでくれ。
 和人がそう言ったから。
 いや、違う。言われたから近寄らないというのは、ただの言い訳だ。
 明日奈自身、傷つくことが怖かったから。そして、また和人を傷つけることが怖かったから。
 不安、恐怖に打つ勝つことができれば、いくらでも前へ踏み出せる。また和人のもとへ走っていける。

「……気持ちの、問題だね」

 明日奈が呟くと、横のユイが柔らかく微笑んだ。

「大丈夫だよ、ママ」

 小さな手で、ユイが背中を軽く、しかししっかりと押してきた。

「……うん」

 明日奈も微笑んだ。

 ──この足は今、何の為にある?
 もう一度、あの人の隣に行く為。
 あの人にちゃんと謝る為。
 あの人に想いを伝える為に、明日奈は最初の一歩を踏み出す。

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