第九十六話
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たしは寿命がとても短いの」
「は?」
何を言っている?
「あのまま元の世界に居たとしても数年の命だったと思うし、…まぁ今回再び聖杯として起動したからきっともっと少なくなっているかもしれないけれど…」
「…それで?」
「うん。もっと別の世界ならとも思ったけれど、思いのほかこの世界はわたし達が居た世界と差異が無い。差異が無さ過ぎると言う事は、この子とわたしは同体と言う事」
まぁ、理屈ではそうなるかもしれない。
「この子も今のままではきっと20を越えられないわね」
だから、と前置きをしてイリヤは続ける。
「この子にわたしを同化させる。二人分の魂が有れば普通の人…よりは寿命は少ないかもしれないけれど、それなりに長生きできるわ」
うん…
「そんな顔をしないで、チャンピオン」
俺はどんな顔をしているのだろうか。
「同化して、どうなるんだ?」
「きっとこの子の中でわたしは眠る事になると思う。いえ、同化したのだから眠ると言うのはおかしいのだけれど」
「イリヤがこの子を吸収すればいい」
「そうね。…でもわたしは夢を見てしまったの。キリツグとお母様と三人で暮らす夢を」
でも、それは…その子のもので、今のイリヤの事では無い。
「大丈夫。この子もわたしなのだから」
イリヤは一度言葉を切ると俺を見てすまなそうに言葉を続ける。
「最後に、残った令呪を使ってチャンピオンにお願いするわ」
「どんなお願いだい?」
「『この子サーヴァントになってあげて』『この子をどんな外敵からも必ず守って』」
令呪が発動され、強大な魔力が俺を縛る。
「中々残酷な命令だね」
「うん、ごめんね。チャンピオン」
「イリヤの最後のわがままだ。その子が寿命で死ぬまではその願いを叶え続けよう。何、数百を生きた俺達には数十年なんてあっと言う間だ」
「うん、お願いね。チャンピオン」
イリヤはさよならとは言わなかった。
ただ、お願いと言って彼女は光の粒子となって隣の小さなイリヤへと吸収されていった。
…
…
…
程なくして小さなイリヤが目覚める。
「えっと、ここは?」
キョロキョロと辺りを窺う小さなイリヤへ片膝を折り視線を合わせる。
「サーヴァント、チャンピオン。今日から君の剣であり、盾だ」
「サーヴァント?」
まだ状況が良く分かっていないイリヤは小首をかしげ、そう呟いただけだった。
俺は、混乱する小さなイリヤを抱き上げると小さく抗議の声を上げる彼女を無視し、土蔵を出ると衛宮邸の門の外に此方を窺っている二つの気配の方へと歩を進めた。
「キリツグ、お母様っ!」
「イリヤっ!」
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