第九十六話
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の脱落に歓喜していた。
これで今回の聖杯戦争の勝者は時臣になったからだ。
静かな喜びで体が震えている時臣を一瞬で現実に戻したのは鈴のような少女の声が後ろから掛けられた時だった。
「今回の聖杯戦争の勝利、おめでとうございます。遠坂時臣さん」
ばっと後ろを振り向けば、昨日の紅い服を着た少女がイレギュラーサーヴァントと桜を連れて背後に迫っていた。
「君は…」
アーチャーを令呪で呼ぶか、と一瞬考えるが、その間を相手は与えてくれまい。現れる一瞬前に自分は殺されるだろうと迂闊な事を避ける。幸いにして相手は会話をしたいようだった。
「昨日の答えかい?」
「ええ。…とは言っても、今回の聖杯戦争の勝者は貴方。その答えはもう少し先送りしても構わないでしょう」
凛にしてみれば確実に自分たちが来た影響であるのだろうが、聖杯戦争の勝者になった父、時臣にまずこれからの事を問う。
「戦争の勝者は貴方でしょうが。聖杯の器は手に入れましたか」
「あっ…」
時臣はうっかりしていた。幾ら降霊儀式で聖杯を呼び出すとは言え、聖杯の器を用意するのはアインツベルンだ。その確保がなければ聖杯の降臨などありえない。
そしてアインツベルンが容易く他者に聖杯の器を譲らないだろう可能性を思いつく。
「あきれた…」
どうすればと思考していた時臣だが、目の前の少女に彼女のサーヴァントが何事かを耳打ちしている。
「はぁ?まぁ良いけれど」
と声を上げた後、凛は時臣に告げる。
「聖杯の降臨の準備が整ったらしいわ。場所は円蔵山、柳洞寺の境内だそうよ」
「なっ!君達が聖杯の器を確保したのかっ!…いや、それを私に伝えてどうしようと言うのだ?」
「もし今回の聖杯が文字通り万能の釜だとしたら何も問題は無いわ。聖杯を貴方に渡し、遠坂の家が根源への足がかりを得た事を賞賛するわ。だけど、そうでなかったら……いえ、なんでも無いわ」
「凛。アーチャーが戻ってくるわ」
ソラがサーヴァントの気配を捉え凛に退席を進める。
「それじゃ、私達は先に柳洞寺に行ってますね。桜、今はお姉ちゃんに付いてきて」
「う、うん…」
おずおずと桜は目の前の父親から視線を反らすと凛の腕へと収まった。
「桜っ…!」
呼び止めて、何かを言おうとして詰まった時臣を置き凛達は円蔵山へと飛んで行った。
時臣からは刺客になる反対側のビルの屋上でスナイパーライフルのスコープを覗いていた舞弥は乱入した凛たちに驚き、さらにソラとスコープ越しに視線が合った事で時臣の殺害のタイミングを逸したのは誰にとっての幸運だったのだろうか。
舞弥は切嗣からの連絡を受け、状況を報告すると闇にまぎれて自身も移動する。円蔵山、柳洞寺へと。
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