暁 〜小説投稿サイト〜
銀色の魔法少女
第四十五話 仲間
[3/4]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
女にそれに割り振るだけの余計な魔力はない。

 所詮は小学三年生。

 そのことを彼女はこの短い間に何度も思い知らされた。

(なんで……)

 彼女は今まで血のにじむような訓練をしていた。

(どうして……)

 けれど、足りない。

(私じゃ、ダメなの?)

 力が、年齢が、体力が、そして何より仲間が、彼女には足りない。

(私じゃ、はやてを救えないの?)

 一度生まれた疑惑は、消えない。

 そして、それが彼女の致命傷となる。

「闇に、沈め」

 闇の書を中心に、膨大な魔力攻撃が放たれる。

「しまっ!?」

 そして、反応が遅れた遼にシールドを張る暇すら与えず、それは彼女を飲み込んだ。




「あ、う…………」

 遼は、かろうじて意識を保っていた。

 倒れそうになる体にムチをうち、闇の書に向き合っていた。

「やあ、あなたも夢の中へ」

 彼女がゆっくりと手を差し出す。

「い、や……」

 遼は力なく、それを拒絶する。

「どうしてそこでまで夢を拒む、夢の中ならあなたは普通の少女でいられる、悲しい事故も、争いもない、穏やかな世界、平和な世界、あなたもそれを望んでいるはずだ」

 それは紛れもない事実。

 けど、彼女は納得しない。

『た、しかに、私は、幸せになれる、かもね、だけど』

 声も出せず、念話で話していても、その疲労が伺えるが、彼女の意志は変わらない。

『それは、否定なの、今まで生きてきた、人たちを、否定するなんて、誰にもできな、い』

 この広い空の下には、幾千、幾万の人達がいて、いろんな人が願いや思いを抱いて暮らしていて。

 その人だけの大切な思いがあって、思い出があって、優しさがあって、なすべきこと、なさねばらならいことがあって、大切な人がいて、だから一生懸命に、精一杯に、本当に精一杯に前に向かって生きている。

 彼女の両親もそうだった。

 彼女を大切に思い、家族を大切に思い、研究に一生懸命だった。

 その結果があの事故だとしても、遼はそれを否定しない。

 その事実を受け止めて、前に向かって生きていく。

 けれど、それは彼女には重すぎた。

 それを受け止めた結果、彼女は歪み、狂い、壊れた。

 前に進むことが、必ずしも良い結果を残すとは限らないことを彼女は知らない。

 時には立ち止まって、後ろを振り返ることも大事なことを、彼女は知らない。

 一人で抱え込まず、人に頼ることも大切なのを、遼は知らなかった。

 結果、彼女は負けた。

 運命、必然、予定調和。

 様々な言い方があるが、彼女が一人で抱え込んだ時点で、この結末は必至だっ
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ