第四十五話 仲間
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女にそれに割り振るだけの余計な魔力はない。
所詮は小学三年生。
そのことを彼女はこの短い間に何度も思い知らされた。
(なんで……)
彼女は今まで血のにじむような訓練をしていた。
(どうして……)
けれど、足りない。
(私じゃ、ダメなの?)
力が、年齢が、体力が、そして何より仲間が、彼女には足りない。
(私じゃ、はやてを救えないの?)
一度生まれた疑惑は、消えない。
そして、それが彼女の致命傷となる。
「闇に、沈め」
闇の書を中心に、膨大な魔力攻撃が放たれる。
「しまっ!?」
そして、反応が遅れた遼にシールドを張る暇すら与えず、それは彼女を飲み込んだ。
「あ、う…………」
遼は、かろうじて意識を保っていた。
倒れそうになる体にムチをうち、闇の書に向き合っていた。
「やあ、あなたも夢の中へ」
彼女がゆっくりと手を差し出す。
「い、や……」
遼は力なく、それを拒絶する。
「どうしてそこでまで夢を拒む、夢の中ならあなたは普通の少女でいられる、悲しい事故も、争いもない、穏やかな世界、平和な世界、あなたもそれを望んでいるはずだ」
それは紛れもない事実。
けど、彼女は納得しない。
『た、しかに、私は、幸せになれる、かもね、だけど』
声も出せず、念話で話していても、その疲労が伺えるが、彼女の意志は変わらない。
『それは、否定なの、今まで生きてきた、人たちを、否定するなんて、誰にもできな、い』
この広い空の下には、幾千、幾万の人達がいて、いろんな人が願いや思いを抱いて暮らしていて。
その人だけの大切な思いがあって、思い出があって、優しさがあって、なすべきこと、なさねばらならいことがあって、大切な人がいて、だから一生懸命に、精一杯に、本当に精一杯に前に向かって生きている。
彼女の両親もそうだった。
彼女を大切に思い、家族を大切に思い、研究に一生懸命だった。
その結果があの事故だとしても、遼はそれを否定しない。
その事実を受け止めて、前に向かって生きていく。
けれど、それは彼女には重すぎた。
それを受け止めた結果、彼女は歪み、狂い、壊れた。
前に進むことが、必ずしも良い結果を残すとは限らないことを彼女は知らない。
時には立ち止まって、後ろを振り返ることも大事なことを、彼女は知らない。
一人で抱え込まず、人に頼ることも大切なのを、遼は知らなかった。
結果、彼女は負けた。
運命、必然、予定調和。
様々な言い方があるが、彼女が一人で抱え込んだ時点で、この結末は必至だっ
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