第13話 現われたのは炎の邪鳥ですよ?
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たちに降り注ぐ!
「たちまちに天津御空多奈曇り、天津美津古保須我如く降りて――――」
ハクの祝詞は続く。
頭上はびっしりと覆い尽くす赤。鼓膜では受け止められない程の爆音。眼が開けて居られない程の高熱。
そう。一瞬の内に周囲に存在する大気すべてが炎に変わって仕舞ったかのように感じる。
しかし……。
しかし、同時に完全に乾き切って居た南風から、何時の間にか東からの風に変わりつつあるように、感じられた。
東からの風。大河を渡り吹き来たる湿り気を帯びた風に……。
そして、何とも表現のし難い香り。雨の降る前に感じる独特の香りを捉えたように思えたのだ。
後少しの間、持ちこたえられさえすれば……。
そう美月が淡い期待を抱いた瞬間。
それまで、数羽単位で有ったヒッポウの急降下から炎を放つ攻撃が、数百、数千規模の軍団に因る統一された動きへと変化したのだ。
その様子は、正に赤い天の底が抜けたかのような動き!
その一羽一羽の能力もさる事ながら、すべての動きが連動するかのような今のヒッポウの動きは――――
最初に放たれたタマの冷気の刃が十数羽のヒッポウと相殺。
次に白娘子の構築した水気の結界が、猛烈な勢いの炎に圧されて消滅。
そして、一瞬の均衡の後、注連縄が。その注連縄を結わえられた榊の木に炎が燃え広がって行く。
美月の細い腕がそれぞれに優美な曲線を描いて引き下ろされ、弓と弦が張りつめる。
その美月の周囲にもヒッポウにより放たれた炎が次々と着弾し、熱せられた大気が作り出す上昇気流と火の粉が彼女の顔に強く吹き付けて来た。
ここは海の底。水の代わりに炎の気のみで覆われた海の底に居るかのように、美月には感じられた。
但し!
「大神たちの神留まり坐す山々の口より狭久那多利に下し給う水を――――」
吹き荒れる熱風の向こう側からハクの祝詞を紡ぐ声がはっきりと聞こえて来る。
大丈夫。彼女は未だ健在。
白猫のタマも。当然のように白娘子の存在も感じる事が出来る。
そして、自らの背後に存在する両手を胸の前に組み、まるで睨み付けるような強い瞳に美月を映すシノブの姿もありありと脳裏に浮かばせる事が出来る。
まして、口では色々と言いながらも、ここまで炎に巻かれながらもハクはおろか、美月やタマ、そして、白娘子に至るまで無傷で存在して居る事が、彼女。破壊神の少女シノブが何らかの能力を行使しているのは間違いない。
希望は未だ美月の手の中に有る。それは確信出来た。
身体中の霊気すべてが自らの構える弓に集まって行くような奇妙な感覚に囚われる美月。
但し、不快な気分ではない。
弓が矢束いっぱいまで張りつめられ、
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