第13話 現われたのは炎の邪鳥ですよ?
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そう警戒の声を上げる白猫。その声は緊張を感じていながらも、この事態をまったく恐れて居る雰囲気を感じさせない非常に頼もしい雰囲気。
その視線の先を見つめる美月。その美月の額には、暑さからの理由だけではない汗が滲んでいた。
其処、先ほどまで雲ひとつ存在して居なかった蒼穹に存在していたのは――――
重い羽音を立て、こちらに向かって来る鈍いくすんだ血のような赤の大群。
「九頭一脚で、鶴に似たくちばしと鷹に似た羽を持つ怪鳥。口から常にちらちらと炎を吐いている」
同じように上空を見上げたシノブがそう呟いた時、再び上空より響く、驚くような大きな鳴き声。
「そして、山の精霊や悪霊を驚かせるような声。間違いないわ。あいつらはヒッポウ。すべての存在の焼滅を願う邪鳥」
そして、あいつらは火事と日照りを招くと、伝承では伝えられている。
……と、そう破壊神の少女シノブは言ったのだった。
そう。顕われたのは中国の伝承内に存在する邪鳥ヒッポウ。その数は……。いや、数えるだけ無駄なのは間違いない。
美月たちが見上げる其処には、まるで太陽から次々と生まれ出るかのような勢いで増え続けて居るヒッポウの大群が蒼穹を完全に埋め尽くして居たのですから……。
「日頃日照りを経て百姓の田作り穀作を始め、草の片葉に至るまで枯れ萎えるが故に――――」
普段の日常生活を営んでいる時とはまるで別人。背筋を伸ばす凛とした立ち姿で澱みなく祝詞を唱えているハク。その姿は神聖にして侵し難い気品を発する。
刹那、数羽のヒッポウが急激にその高度を下げ、ハクに接近を開始。
間違いない。彼らヒッポウが顕われた理由はハクの雨乞いをさせない為。このギフトゲームの相手か、もしくは相手が切って来たカードだと言う事。
しかし!
急降下に因り、今まさにハクをそのくちばしより――伝説に語られる通り炎が放たれる正にその瞬間。その内の半数までのヒッポウが冷気の刃により弾け、そのまま陰の火気へと変じて仕舞う。
但し、次の刹那。仲間の消滅など意に介す事もなく放たれる紅蓮の炎!
そう。そもそも、こいつらは陰火の精が凝り固まって誕生した異形のモノ。こいつらそれぞれの個体に仲間に対する感情はおろか、自らの生命を失う事に対する恐怖心さえ持ち合わせてはいない存在。
瞬間、轟と熱風が巻き起きる!
その炎は、進路上に存在するすべてを燃やし尽くす勢い……大気さえも燃やし尽くしながら、注連縄で護られた急ごしらえの聖域と、其処の中心に立つ黒髪の少女を嘗め尽くすかに思われた。
しかし、そう、しかし!
紅蓮の炎と聖域の丁度中間点に浮かび上がる防御用の魔術陣。水の気を帯びた防御結界がその強すぎる火気を
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