第13話 現われたのは炎の邪鳥ですよ?
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、更に、神はふたつの瞳を持つ者よりも、ひとつの瞳の者を好み、ひとつ目の方が神とより親しくなれると言う記述を残した古文書も存在している。
つまり、ハクのような虹彩異色症の人間は、古来より生け贄として神に捧げられ易い存在だったと言う事。
「そんな事を言うんだったら、アンタが雨を降らしたら簡単じゃないの!」
それぐらいの事は簡単に出来るんじゃない。少し強い口調でそう言う美月。
但し、それが出来ない事ぐらい美月にだって理解出来ている。
苦しい事や困難な事はすべて絶対者や神の能力に頼り切って人間が何も為さないのなら、そんな人間に対して神は加護を与える事を止める。
少なくとも、美月が学んだ東洋系の神道の神々と言うのはそう言う存在。神に対して誓いを立て、それを貫く事に因って、彼女らの術と言う物は効果を発揮するようになる。
そう。残念ながら、人間と神の関係は一方的な支配者と被支配者の関係ではない。いや、頼り切って何も為さないのなら、飼い主と家畜と言う関係に成る。
人は神に対して誓いを立て、その誓いに因って神は人に加護を与える。人と神の関係は相互関係。一方的な支配と被支配の関係などではない。
そして、今回のハクが行おうとしているのは、その神が人間に対して問い掛けて来た試練に対する命を賭けた答え。
そんな神と人間の対話に、他の神に等しい存在が介入して来る事は許されない。
破壊神の少女、シノブは何事が言い返そうとしたが、しかし、声にしては返事を行わず、ただ黙って美月からハクに視線を移した。
その瞬間。
大きく響く柏手がひとつ。
そう。柏手とは天地開闢を示す音霊そのもの。陽の気の勝ち過ぎたこの地を正常に戻す為の……。
いや、ハクと何らかの神との対話の始まりに相応しい。
そして、おもむろにハクが言葉を発する。
「掛け巻くも畏き其の大神の廣前に申く――――」
祝詞の最初の一節。
彼女の聞き慣れたやや低いその声が、柏手に因って作り上げられた清浄な空間に朗々と響き渡る。
そう。この瞬間、終にハクに因る雨乞いの儀式が始まったのだ。
その瞬間、美月は訳の判らない何かを感じた。
恐怖……ではない。果てしない喪失感。何か、非常に大切な事を忘れているかのような……。ここまで、喉元まで思い出しかけているのに、其処から出て来ない非常にもどかしい感情。
そして何処かから聞こえて来る異常に大きな、鳥とも、それ以外の音。……そう。例えば、竹の節を抜かずに火の中にくべた時に、熱せられた竹が弾けた時の音に似た声が聞こえて来たのだ。
「美月、顕われたで」
足元から遙か上空を見つめながら、
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