第13話 現われたのは炎の邪鳥ですよ?
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ギフトゲームに参加する事を強硬に反対しなかったのは、昨日までにハクが示した実績。
彼女ならば、このゲームに関してもどうにかしてくれるのではないか、と言う淡い期待。
プイっと言う感じでそっぽを向き、少し何かを考えながら、自らの首から掛けた銀製の十字架を右手の中指でそっと触れている破壊神の少女シノブ。
彼女が何を考えて居るのかは判りませんが、少なくともこの雨乞いに関しては、直接的な介入を行う心算はないように感じられた。
最後は自らに与えられた役割を淡々と熟す白娘子。
彼女に取ってハクは己の真名を賭けて戦った相手で有り、そして敗れた相手でも有る。そのハクが危険なギフトゲームに挑むのなら、自らの能力すべてを使用して彼女を手助けするのが当然だ、と考えて居るようで有った。
三人と一匹の意志はこの時に固まった。後は……。
その場に集まった全員の顔を順番に見つめた後、軽く微笑むハク。そして、注連縄に囲まれた聖域に彼女の白い姿が一歩足を踏み込んだ。
その瞬間、世界が変わった。
照り付ける太陽。
衣服に隠された皮膚にさえ突き刺さって来るかのような強力な陽射し。
大地から立ち昇るが如き熱気。
そして、南から吹き寄せる熱風。
世界を支配する理すべてが、この場所に辿り着いてから変わる事はない。
しかし――――
しかし、ハクが注連縄の内側に入った瞬間、確かに世界が変わった。
表面上から……。五感で感じる事の出来ない何かが、この瞬間に変わったのだ。
そうそれは……。
「まるで、欠けて居た重要な部品が有るべき場所に納まったみたい」
我知らず美月が呟く。それぐらい、注連縄で囲われた聖域内のハクはその風景の中に溶け込んで居たのだ。
ただ……。
ただ、矢張り感じる不安。まるで、簡単に足を踏み入れてはいけない禁足地と成って居た場所に、間違って足を踏み入れて仕舞ったような……。
これは本能的な恐怖。人が踏み入っては成らない領域に足を踏み込んで仕舞ったかのような、言い様のない不安感。
「あたしが昔住んで居た世界では、雨乞いをする時に水神に生け贄を差し出す地方も存在していたわ」
何時の間にか傍らに近付いて来ていたシノブが、彼女に相応しくない……。いや、破壊神で有る彼女に相応しい口調で、呟くようにそう言う。
そして、その言葉は美月が感じた不安と同種の物。
「それに、雨乞いの為に水神に対して美しい娘の生け贄を奉った地方も有るけど、その娘は片目で有ったと言う古文書も残されていたはずよね」
更に、そう続けるシノブ。
そう。元々、ハクのように左右の瞳の色が違う人間は、片方の瞳で此の世を見、もう片方の瞳で彼の世を見る、とも言われて居り
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