第13話 現われたのは炎の邪鳥ですよ?
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初夏と言うには、あまりにも激し過ぎる陽射しに、少女は忌々しげにその強い意志を感じさせる瞳を上空に向ける。
其処には、未だ春に分類される季節にしては苛にして烈な太陽が、今を盛りとばかりに強く世界を照らし出していた。
その苛烈なまでの直射日光に、少し鼻を鳴らして不快感を露わにするその少女。
但し、その行為の無意味さに直ぐに気付いた少女が次に、その雲ひとつ存在しない遙か宇宙の深淵まで見通せるかと思われる蒼穹から自らの足元に視線を転じる。すると其処には大地……おそらく、かつては豊かな実りをもたらせた田んぼや畑だったはずの場所が、今では生命の存在を一切感じさせる事のない場所として存在して居た。
そう。無残にひび割れ、緑を感じさせる物は一切存在しない其処には、死の風が吹いていた西の街道とはまた少し違う形で、死を感じさせる大地と成っていたのだ。
但し、この乾燥状態は異常。確か、美月たちが暮らす、この白い光と言う名前のコミュニティの東には滔々と流れる大河と表現すべき河が流れて居たはず。ここから差して離れていない場所に絶えず水が流れて居る場所が有りながら、この場所は何故か、一切の水気を感じる事が出来ない不毛の場所と成って居たのだ。
「ちょっと、こんな場所で本当に雨乞いをやろうって言うの?」
かつての破壊神の少女。自称シノブが、水気を一切感じさせない、乾き切った元田んぼの土を革製のローファーで蹴り上げながらそう聞いて来る。
その瞬間。彼女の長い黒髪と、地球世界の女子高生のような水色のミニスカートの裾を、南からの熱風が僅かに弄った。
「子供たちの話では、偶には雨が降る、と言う話でしたが……」
完全にひび割れた状態を見せて居る元田んぼらしき大地に腰を下ろし、土の状態を確認していたハクがそう答えた。
その彼女が纏うのは無紋の白衣。紅の袴。そして、白い足袋。見た目から感じる通り、東洋系の神職に在る女性の基本の姿。
この炎天下で二人とも汗ひとつ掻く事もなく、白い肌は強い陽射しに溶けて仕舞う雪の如き白。
二人並んで立つ姿は、本当に清楚で儚げな印象のハクに対して、生命力の塊のような、生き生きとした活力を周囲に発して居るシノブ。
奇妙にバランスの取れていない二人組だからこそ、お互いに欠けて居る部分を表現出来るように周囲に見えていたかも知れない。
そして、立ち上がった二人が向かう先に存在して居たのは……。
木製の台に、飯や果実。そして、魚などを高く盛り上げた器を幾つか置き、その周りを注連縄で囲っただけの簡単な物。
とてもではないが、これほど酷い状態の日照りをどうにか出来るほどの準備が整っているとは言い難い状況。
「この村の状況なら、無理に農業に頼らなくても、河での漁業や、一時的になら森での
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