クトゥグアとの戦い T
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『ん?』
エトナ火山の山頂付近。最も火の精が強いこの場所で力を蓄えていたクトゥグアは、空間への異常を感知した。
「よっしゃビンゴ!今回はズレなかったね!」
空間が歪み、人影が現れる。そこに出現したのは、鈴蘭と護堂だ。二人を見てクトゥグアは、その可憐な少女の見た目からは想像も出来ない程、獰猛で威圧感のある声で叫んだ。
『来たか神殺し!我が敵よ!!!』
「来たぞクトゥグア!お前がやったことのツケを支払わせにな!!!」
クトゥグアの威圧は、既に常人ならば即死していてもおかしくない程の圧迫感を伴っていた。しかし、護堂はそれを怯むことなく受け止める。こちらも、獣のように獰猛な顔で口角を上げながら答えた。
それに気を良くしたクトゥグアは、攻撃を始める。
『それでこそ、我が宿敵を弑逆した神殺しよ!そうでなくては、我が直接相手をする意味がない!!!』
今までは力を抑えていたのか、彼女が神気を開放すると、彼女の身体は眩い程の炎に包まれた。彼女本来の姿へと戻ったのだ。これはつまり、彼女は護堂に対して、ほんの少しの手加減すらするつもりが無いことを示していた。
『それでは、これを受けてみよ!耐えられるか!?』
彼女のその叫びと共に、地面が脈動する。ゴゴゴゴゴゴ・・・という、地面が悲鳴を上げるような音と共に、立っていられない程の揺れが、鈴蘭と護堂を襲った。
その攻撃の正体を看破した鈴蘭が、悲鳴のような叫びを上げた。
「嘘・・・!?噴火させるつもり!?」
「な・・・!?こんな場所で噴火なんてさせたら・・・!?」
元々、エトナ火山は常時噴火していると言ってもいい程の活火山である。むしろ、それによって吹き出る、栄養価たっぷりの火山灰を利用して果樹園などを営んでいるのだ。多数の死者が出るほどの噴火をしたのは凡そ800年前と300年前であり、そんな昔のことなど誰も覚えてはいない。今も、この火山の近くには数千人の人間が暮らしているのだ。かなりの人数を避難させたが、クトゥグアから発せられる狂気の権能により、既に大多数が会話すら不可能な状態になっており、一向に避難作業が進まなかった。これ以上時間を掛けるのも危険という判断から、避難が終わるのを待たずにクトゥグアの排除を始めたのである。
今この瞬間も、この付近で、救助活動に勤しむ魔術結社の魔術師たちもいる。
「く、クトゥグアぁああああああ!!!」
怒りのあまり、護堂が叫ぶ。そのまま特攻しそうになるが、それを驚異の精神力で押さえつけた。それを見て、鈴蘭とクトゥグアは内心で驚きの声を上げる。
よもや、神殺しになったばかりの人間が、ここまで戦いに順応しているとは、と。
本来なら、無謀な特攻をしてもおかしくない程に彼は怒り狂っていた
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