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占術師速水丈太郎  横須賀の海にて
第五章
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ているのか」
「違う」
 彼はそれは否定した。
「私は気付いたのだ。野望よりも海が好きなのだと」
「そうか」
 速水はそれ自体はいいと思った。
「海に永遠にいたい程だ」
「それで生きている者に迷惑がかかってもか」
「生きている者のことは知らぬ」
 彼はそれは無視した。
「私は死んでいる。ならば生きている者のことはどうでもよい。違うか」
「それはエゴイズムというものだ」
 速水はそれを否定した。
「貴殿がここに留まればそれだけで多くの者に危害が及ぶ。それでもよいのだな」
「構わぬ」
 彼は言い切った。
「私が海にさえいられればな」
「わかった。では話はいい」
 速水も話を打ち切った。
「闇に帰れ」
 その声と共にカードが死霊に突き刺さった。だがそれは死霊の身体を通り抜けてしまった。
「ムッ!?」
「霊体も傷つけられるカードか」
 着地した速水の後ろから声がした。
「よいものを持っている。どうやらこれまでの退魔師とは少し違うようだ」
 そう言いながら速水の首に手を伸ばしてくる。
「グッ」
 そして掴んだ。まるで氷の様に冷たい感触が彼の首を覆った。
「だがこうしてしまえばカードも使うことはできない。違うか」
 彼は問うた。
「所詮生者が私を倒すことはできぬ。このまま我等が世界に引き摺り込んでくれようぞ」
「カードを使うことはできないか」
 速水は喉を締められながらもまだ声を出してきた。
「違うとてもいうのか」
「そうさ、違う」
 彼は余裕のある声でこう返した。
「私のカードは特別でね。私の意志で自由に動く」
「何っ」
「監察が足りなかったな。今のカードの動きを見て気付かなかったか」
 ニヤリと笑って言う。そして消えた。
「!?」
「そして私の術はカードだけではない」
 その氷の様な手から離れた。そして死霊の前に姿を現わした。まるで影の様に。
「こうした術も使える」
「攻めるのも守るのもできるというわけだな」
「そうだ。もっともこれだけではないがな」
 右目で死霊を見据えながら言う。
「行くぞ。覚悟はいいな」
「それは本来私の言葉だがいい。ではどうするのだ」
「こうする。今度はどうだ」
 またカードを飛ばしてきた。今度は二手である。
「どちらにしろ同じこと」
 消えた。それでカードをかわした。
「この程度か」
 何処からか声が聞こえてきた。また姿を消したようである。
「さて」
 しかしその言葉にはとぼけてきた。
「私とて同じことを二回する程芸がないわけではない」
「負け惜しみにしか聞こえぬが」
「その証拠にカードの数を見てみることだ」
「カードを」
「そうだ。タロットの大アルカナは二十二枚」
 これは決められた数である。これより多いことも少ない
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