第五章
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すらあった。
「その通り。何百年もな」
「船を転々として彷徨っていたのか」
「そうだ」
死霊は答えた。
「海から離れられぬのならば。船にいればいい」
そしてこう言う。
「永遠にな。そして私は海の男であり続けるのだ」
「迷惑な話だ」
速水はそれを聞いてこう述べた。その右目で死霊を見据えている。
「生きている者にとっては。ここは生きている者の世界なのだから」
「死んでいる者には用はないと言いたいのだな」
「その通りだ。そのせいで生きている者が迷惑を被る」
「そんなことは私の知ったことではない」
死霊は言い返した。
「私がここにいる為に。少し命等を拝借させてもらっているだけだからな」
「命をか」
「そうだ」
「だからあの客船で船員達の体調がおかしくなったのだな」
「あの客船はよかった」
死霊は全く表情を変えずに述べた。ただ声だけが笑っていた。
「糧が多かった。おかげでこうして力を取り戻すことができた」
そう言いながら右腕を掲げる。するとその手に青白い炎が宿った。
「行くぞ。降りかかる火の粉は払う」
「生憎私は火の粉ではない」
速水はこう答えながら身構える。その周りをタロットカードが舞う。
「退魔師だ。さっきも言ったな」
「一度聞いたことは忘れない主義だ」
死霊はまた言葉を返す。
「そして私に害を加える者は」
言いながら腕を振り下ろす。
「我等の世界に来てもらう」
そしてその手に宿る炎を宿った。そしてそれで速水を襲う。
速水は左に動いた。そしてそれで炎をかわす。
「速いな」
「生憎場慣れしているので」
軽口を叩いた。
「この程度ではね」
「そうか。ならばやり方を変えよう」
死霊はそう言うと腕の動きを止めた。
「実体的な攻撃が無駄ならば他に方法がある」
「むっ」
それまで微動だにしなかった死霊の青い目が動いた。そして速水を見据えてきた。
「来い」
そして速水に対して言った。
「私の側へ。そして我等の仲間となるのだ」
「我等の仲間に」
「そうだ。そして永遠に生きる者の世界と別れるのだ」
「生きる者の世界と」
速水の右眼から光がなくなった。そしてフラフラと死霊の方へ歩いていく。
「さあ、もうすぐだ」
死霊はまたしても言った。
「死せる者の世界まで」
確かにもうすぐであった。速水は死霊のすぐ側にまで来ていた。あと一歩で死霊の手が届く範囲にまで達する、そうしたところにまで来ていた。
だがそれは全てまやかしであった。速水は急に上に跳んだ。
「むっ!?」
「生憎私はまだこちらの世界に未練があってね」
右目で死霊を見据えていた。見ればその目には光が戻っていた。
「そうおいそれとそちらの世界に行くわけにはいかないのだ」
「私の
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