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占術師速水丈太郎  横須賀の海にて
第三章
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はもう頂いておりますし」
 実はこの仕事で彼は一千万単位の報酬を防衛庁から貰っている。話が出ると同時にそれだけの額が出て来て彼の方が驚いた位である。以前の軍との違いを明確にしたい為か防衛庁という組織はとかく悪い噂を嫌う。それを払拭する為には多少の金銭的な無理は厭わないところがある。さらに民間人に対しては極端に低姿勢である。その為いきなり巨額の報酬を提示してきたのである。なお当然であるがこれの皺寄せはあり陸上自衛隊の居住設備はお世辞にもいいとは言えない。改善されてきているとはいえそれでもまだかなり悪いのは言うまでもない。
「有り難うございます」
 艦長はそれを聞いて頭を下げた。まだ二十代かそこいらのしがない占い師に対する態度ではなかった。これには速水は内心かなり驚いていた。
「あの」
「はい」
「そこまでされなくてもよいですから」
 彼はやまりかねてこう言った。
「私もこれが仕事ですし。ビジネスパートナーですから」
「はあ」
「気楽にとはいかなくてもお互い形式ばったことは抜きにしましょう。まあリラックスでもしながら」
「わかりました。では早速」
「早速?」
「資料を。補給長」
「はい」
 眼鏡をかけた銀行員の様な風貌の若い士官が進み出てきた。階級を見れば一等海尉であった。艦の補給や経理、そして書類のことに関する責任者である。
「こちらです」
 その補給長が速水に一冊のファイルを差し出してきた。見ればかなりの分厚さである。
「これが一連の事件に関する資料ですか」
「はい」
 艦長は答えた。
「どうぞ御覧になって下さい」
「はい」
 速水はそれを受けて資料を読みはじめた。そして読み進むうちに何点か不審な点に気付いた。
「あの」
 そして艦長に声をかけてきた。
「何でしょうか」
「客船の救助に向かうまでは何も起こっていないのですね」
「そういえば」
 これには艦長だけでなく他の幹部達もハッとした。
「確かにその通りです」
 そして艦長もそれを認めた。
「新造艦であるせいかも知れませんが。それまでは何もなかったです」
「やはり」
 速水はそれを聞いて頷いた。そしてさらに尋ねた。
「その客船の災害に関する資料はありますか」
「補給長」
「はい」
 それを受けて先程の補給長がまた席を立った。
「あれを」
「わかりました」
 そして補給長はもう一冊ファイルを出してきた。速水はそれにも目を通した。
「何かわかりますか」
「この客船ですけれど」
「はい」
「どうもおかしい事故ですね」
「そう思われますか」
「はい。この火災はどう見ても普通の火災ではありません」
「では一体」
「ちょっと待って下さい」
 彼はこう言うと右手を懐に入れた。
「今占ってみますので」
 そしてそこから
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