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「はぁ……」
退院してからもう何度目――何どころか何百回目の溜め息と共に携帯を仕舞う。
四月の二十日に連絡を取ったのが最後。
忙しいからと言っていたからメールを控えていたけど……もう五月に入ってしまった。
二、三回くらいはメールを送ってみたのだけど、返事はない。
嫌われたくないからこれ以上しつこくはしたくないけど――もしかしてもう嫌われちゃった?
そう考えるだけで震えが止まらなくなるほどに私は彼に心を奪われてしまっている。
「うー……あー……」
自分でもどうかと思う。
四月、こっちにやって来た初日に出会った裏瀬くん。
一目惚れなんて信じてなかったけど……信じざるを得ない。
見た瞬間に胸が高鳴り、言葉を交わして好きだと気付く。
幾ら何でもおかしいと思うけど――――これが運命なのかもって思ってしまう。
少女漫画じゃあるまいし、ゆかりにはそうツッコまれたけどそうとしか思えないのだ。
"私は彼に出会うためにこの街へ来て、彼は私に会うために生まれて来た"
…………うん、痛い妄想だと分かっている。
けど、そう思ってしまうくらい私は彼にぞっこんなのだ。
初対面の時以来、直に会ってもいないし話してもいないのに……
ううん、それが余計に気持ちを高めているのかな?
「はふぅ……」
見上げれば白い天井、もうこの部屋にも慣れた。
学校にだって上手く馴染めている。
ペルソナ、影時間、S.E.E.S、色々と厄介なこともあるけど概ね私生活は充実している。
なのに――――胸にポッカリ穴が開いたような気がする。
きっと、彼に出会わなければ私は今の生活を楽しんでいたと思う。
けど、出会ってしまった。
私の胸に消えない穴を開けてしまったのだ。
「んにゃ!?」
まだ九時前だけどどこのまま不貞寝してしまおうと思ったその時だった、携帯が鳴ったのは。
ちょっと古いラブソング、裏瀬くん用に設定した着信音だ。
急いで携帯を開くと短文で一言だけ書いてあった。
今日から時間作れる――と。
「ど、どどどどうしよう!? お化粧――ってしたことないから分かんないし、そもそも道具ないよ!」
あたふたと部屋を駆け回っているとノックの音が耳に入る。
「公子? 何かやけに騒がしいけど黒いアレでも出たの?」
「あ、ゆかり? ううん、違う違う。アレが出たなら多分大声で叫ぶだろうし」
「じゃあ何があったのよ?」
「えっと……裏瀬くんからメール来たの」
「マジ? だったら桐条先輩に知らせた方が良いんじゃ……」
「あ、そっか。忘れてた」
退院した後に桐条先輩から説明を受けた時、裏瀬くんのことを話したのだ。
ペルソナを使ってシャドウを撃退した――
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