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〜烈戦記〜
第十二話 〜両軍〜
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真っ先にここへ来たのがわかる。
その理由は私が蕃族との関係や、何より息子の心配をどれだけしているのかを知っているからだろう。
だが、それでも私は自分を恥じる気持ちがあっても、既に溢れ出てしまった感情を抑える事ができなかった。

『わ、私は...私は...』

私は再び椅子の上に腰を降ろした。

『私は...これから蕃族の者達にどんな顔をしていればいいんだ...』

長く対立していた最中、半ば一方的にこちらから友好的な関係になろうと持ち掛け、10年は掛かったがそれでも私の申し込みを受け入れてくれた彼ら。
更に商人を介して伝わってくる、敵国であったのにも関わらず私を信用してくれる多くの蕃族の民の声。
私はそれを裏切ったのだ。

考えれば考える程私は全ての事を投げ出したくなってくる。
私はなりふり構わずに髪を力一杯掻き見出した。

『...』

そして再び部屋は静寂に包まれた。

そんな静寂の中で私は気付いた。
私は頭を上げた先にいるであろう凱雲の言葉を待っている事に。
何でもいい。
何でもいいから今の私を一人にしないで欲しい。
この辛さを共用して欲しい。
この辛さを知って欲しい。
いざとなれば私の行く当ての無い感情の捌け口となって欲しい。

私はそんな自分の童子の我儘のような心境に再び落胆した。
凱雲は今どんな心境なんだろうか。
真夜中に戦闘に駆り出され、日が登り疲れて尚上司に気を使い真っ先に報告をしに来てみればその上司の八つ当たりや我儘に付き合わされて...。
私ならとてもじゃないがついていけない。

私は凱雲への謝罪と解放を伝えるべく顔を上げようとした。

『...戦闘の中、ある敵の老将と出会いました』

だが、先に口を開いたのは彼自身だった。
私は彼が話始めた話の腰を折らないために気取られないよう再び顎を引いた。

『その老将は”まさか貴様らから裏切るとはな”と言ってました』

私はその言葉で全身が鉛の様に重くなった気がした。
それは想像はしていたが、実際彼らが口にしたという事実が私に重くのしかかった。

『しかし』

だが、それだけでは話しは終わらなかった。
私は半ば方針状態で次の言葉を覚悟した。

『しかし、これは私が思うに彼が恨み辛みの類いで吐いた言葉ではないと感じました』

だが、私の覚悟とは裏腹に彼は私に期待させるような言葉を使ってきた。
その言葉に私の顔は自然と上がってくる。

『...どういう事だ』

私は縋る気持ちで彼の話しに食いついた。

『私は彼と手合わせをしたのですが、彼は世の中に対してただ愚痴を零すような人間には私は思えませんでした』
『...』

なんだ。
ただの根拠の無い直感の話しか。
私を慰める為だ
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