塔矢先生
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で私と対局したいと思っていたんですか?
一番聞きたい質問だった。何故私なのか。塔矢先生にそう思ってもらえるのは心底嬉しい。しかし理由を知りたかった。
toya koyo:君の対局を見て、知らない所に強い者が潜んでいる、ということを改めて実感したからだよ。
hujiwara:知らない所?
toya koyo:私は以前saiという見ず知らずのネット碁のユーザーに負けたんだ。彼はプロでも何でもない。それからずっと私はsaiとの再戦を望んでいるんだよ。
sai・・・。緒方先生がぼやいていた。ネット碁に棲んでいた、とても、強い人・・・。それに、私の夢に、その人の名前が出てきた・・・。
hujiwara:なぜ再戦が叶わないんです?
toya koyo:私との対局以来、彼がネット碁に姿を現さないからだ。
hujiwara:先生はネット碁でしかsaiを知らないのですか
toya koyo:私は知らんよ。ただ、想像したことはある。
hujiwara:誰だと思ったんです?
toya koyo:進藤君だ。
ヒカル?saiがヒカル?私はsaiの強さなんて知らないけれど、塔矢先生を負かしたこともある人が、ヒカル?どうにも納得がいかなくてまたキーボードを叩いた。
hujiwara:なぜヒカルだと思ったんですか?saiは先生をも負かしたことがあると
toya koyo:進藤君と新初段シリーズで対局した時と同じ空気をsaiに感じた。それだけだよ。
同じ空気を感じただけで?たった今、塔矢先生と対局して威圧感を私も感じた。しかし、囲碁の強さは対局内容にあるのではないか?確かにヒカルはとても強い。でもヒカルが塔矢先生を負かすなんていうことは想像すらできなかった。
toya koyo:君とはネット碁以外でも対局したい。
思いもよらぬ塔矢先生からのメッセージにすぐに返事を返した。
hujiwara:はい、是非。
打ち込んだ後、ふと考えた。どうやって?塔矢さんに間に入ってもらって?それともこれはただの挨拶なのだろうか。悶々考え込んでいると画面に新しいメッセージが表示された。
toya koyo:息子に頼んでみるよ。
ただの挨拶ではなかったことに喜びが湧いて「お願いします」と返した。チャット画面を閉じてログアウトして、一息ついた。塔矢先生と対局できたことを改めて実感して、畏怖から肌が栗だった。
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