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占術師速水丈太郎  ローマの少女
第八章
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いた。
「影がないのですよね」
「ええ」
「相手は。影喰らいですか?」
 スペインに伝わる妖怪である。夜の闇の中人の影を喰らってその者を殺すと言われている。不気味で恐ろしい妖怪の一つである。
「若しかすると」
「そこまではまだわかりませんが」
 アンジェレッタはそれに応えて言う。
「ただ、影がなくなっているのは事実です」
「そうなのですか」
「はい、そしてその少女が全ての謎の中心にいます」
「その少女に関しての情報は?」
「一応は揃っています」
 そう言いながらモンタージュ写真を出してきた。現代の技術を使ったかなり精巧なモンタージュ写真である。速水はそれに目を向けてきた。
「目撃例を集めていき、こうした姿が出て来ました」
「ふうむ」
 見ればそれは美しい少女であった。茶色の長い巻き毛に黒い瞳、そして豪奢な絹の白いドレスと靴下、赤い靴を履いている。あどけないが白く美しい顔だと言えた。
「見たところ普通の少女ですね」
「少なくとも外見は」
「ですが」
「貴方も感じられますか?」
「ええ」
 速水はここで顔の左半分、髪で隠れている左目を自身の左手で押さえた。どうやらそこに何か得体の知れないものを感じているようである。
「この禍々しい気は」
「有り得ません。只のモンタージュ写真からここまで感じるとは」
「どうやら。恐ろしい存在です」
 速水は顔を押さえたまま述べた。まるで左目がうずいているように。少なくともそう見える動作を彼は今とっていた。
「これだけの気を持っているのは。そうは」
「ええ。私も滅多に会ってはいません」
 アンジェレッタの目が凍っていた。彼女は顔よりも目が動くようである。
「これ程までの気の持ち主には」
「容易ならざるどころではありませんね」
 速水はもうそれを見抜いていた。
「これは。影喰らいなぞ問題ならない位恐ろしい」
「はい」
 彼女もそれを感じていた。
「得体の知れない魔物です。こんなのが今ローマに」
「はい、今も何処かで」
「放っておくことはできません」
 そしてこう述べた。

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