第二章 [ 神 鳴 ]
十五話 娘
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だ名乗っていなかったね。僕は七枷虚空、君の大切な者は責任を持って守るよ」
彼女の手から赤ん坊を受け取る。見た目よりもずっと重く感じた。
「ありがとうございます。その子の名前は紫と書いて『ゆかり』と言います」
「そう、これからよろしく紫」
紫はスヤスヤと眠っていた。銀香その紫の頬に手を当てながら、
「私の可愛い紫、母はいつでも貴方を愛していますよ」
その言葉を残しまるで幻だったかの様に塵となって消えていった。きっとだいぶ前から限界を超えていたのだろう。子を想う母親の強さが小さな奇跡を起こしたのかもしれない。
そんな事を考えていた僕はその時になって重大な事を思い出した。
「………僕……子育てなんかした事ない……」
ごめんね銀香、いきなりピンチだ。
□ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■
あの時は焦ったよね。小一時間位そこでウロウロしてたら紫がぐずり始めてさぁ大変!そしてようやく『そうだ誰かに聞けばいいんだ!』と気付いてこの村に飛んで戻り女性陣に助けてもらったのだ。
事情を説明した時は紫が妖怪だって事で少し混乱したけど村人達は結構快くここに住む事をゆるしてくれた。皆には本当に感謝しなくちゃいけない。
「ん〜〜〜〜…」
寝ていた紫が身をよじる。周りの同い年に比べればしっかりした子だけどまだまだ歳相応な所もある。最近では能力も使えるようになった。本人が言うには「境界を操る程度の能力」らしい。なにやら凄そうな力だけどまだまだ使いこなせないようだ。
今出来るのが変な空間を作ったり(正確には空間の境界を操って開いているらしい。空間の名前は僕がスキマと付けた。だって見た目空間の隙間だし)食べ物の境界をいじって腐らなくしたりである。
食べ物を腐らなくするのは村人からは大絶賛だった。そのうち村の特産品にしようと言っていたな。
気付いたら結構時間が経っていた。そろそろ僕も寝ようかな。紫を起こさないようゆっくりと抱きかかえる。そしてもう一度月を見上げ、
「おやすみ」
それだけ言うと僕は寝室へと向かった。
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