第二章 [ 神 鳴 ]
十五話 娘
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事は出来ても倒滅する事ができない。その為辺境に近い村は妖怪の餌食になりやすかった。
その当時から僕は妖怪や邪神を狩っていてそういった依頼を受けるのは珍しい事じゃない。結果から言えば依頼された妖怪はそこまで苦戦はせずに倒滅できた。ぶっちゃけ紅髪に匹敵するような奴にまだ出会ったことが無い。あいつに比べたら大抵の奴は大した事無いで済んでしまう。
妖怪を倒滅して村へ帰る途中、僕は何かに呼ばれた気がして勘を頼りに進路を変えた。辿りついたのは穏やかに清流が流れる川の畔。
そこには腰よりも長いストレートの金髪をした女性が何かを抱え石に腰を下ろしていた。黒いローブ・デコルテを着ていて黒い長手袋を付けている。
僕が近づいていくとゆっくりと金色の瞳を向けてきた。そしてやわらかく微笑みながら、
「お待ちしておりました」
そう告げてくる。
「待ってた?もしかして約束でもしてたっけ?」
そう言っておどけてみせる。どうやら妖怪ようだけどこっちに害意はなさそうだ。
「いいえ、約束どころかお会いするのも初めてでございます」
彼女はクスクス笑いながらそう返してきた。そして、
「私の名は八雲 銀香(やくも ぎんが)と申します。突然で失礼ではありますが貴方様にお願いがあるのです」
そう言うと銀香はゆっくりと立ち上がり僕の方に近づいてくる。そして僕に自分が抱えていた物を差し出しながら、
「どうかこの子を守ってやっていただけないでしょうか?」
彼女が差し出したのは布に包まれた赤ん坊だった。おそらく彼女の子なのだろう。なんとなくそう感じる。
「……名前も知らない奴に自分の子供を預けようとしてるの?」
普通に考えればおかしな話だ。
「警戒なさるのも無理ありませんね。お気付きかと思いますが私は長くありません」
銀香はその金色の瞳を真っ直ぐ僕に向けながら語りだした。彼女が言うとおり今にも消えてしまいそうなほど気配が薄い。なにかしらの致命傷を受けているのだろう。
「貴方様を待っていたと言うのは私の能力でここで貴方様とお会いするのが見えたからでございます」
「ここで僕と会うのが“見えた”?」
「はい、私の能力は『願った事の未来を見る程度の能力』でございます。この子を救いたいと強く願った時見えたのが貴方様でした」
彼女が言うにはこの力は本当に強く願った事のほんの一部の未来が見えるのだと言う。つまり彼女にとっても賭けなのだろう。
「消え行くこの身にできる事は最早ありません。貴方様にすがるしかないのです」
銀香は涙を流しながらそれでも微笑んでいた。もしかしたら今彼女には愛し子の幸せな未来が見えているのかもしれない。こんな姿を見せ付けられて断れる訳がない。
「ま
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