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或る皇国将校の回想録 前日譚 監察課の月例報告書
六月 野心なき謀略(二)
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一連の騒動で陸軍の代わりに暴動鎮圧にあたった事で警備部門において防具を身に着けた他はいたって軽装備(警杖やさすまたといった道具に鋭剣、そして威嚇用の短銃)の実働警備組織がつくられることになった。
陸軍から見れば一個大隊にもみたないものであったが、五将家にとっては内務省に軍縮であぶれた衆民将校を押し付けるようなものであったらしく、陸軍内でも珍しく一体となって熱心に斡旋を行っていた。
 おそらくはその関係なのだろう、と豊久は目星をつけていた。



「あの連中は予算委員会委員長とその取り巻き連中だよ」
 広報室に顔を出した馬堂大尉に平川中尉が茶をだしながら言った。
「予算委員長?随分と大物じゃないか。ってことは次期民友会幹事長だろ?」
 衆民院は立法機関でもあるが、事実上は各省に経済主体の衆民富裕層の代表者が陳情を行い、それに応えた官僚達が提出した法案の審議を行っている状況である。
むしろその権威の拠り所や発言権の強さの源泉は税制、予算編成の審議権にあるといっても過言ではない。
 予算委員会は各常任委員会の中でも一番序列が高く、このポストを経たら衆民院議長か、党幹事長、上手くすれば政党総裁のポストすら見える重役であった。

「その辺りで何やら考えているようだ。名前は舞潟章一郎。これなら思い出せるだろう?」

「舞潟――舞潟――あぁ!安東と組んで東州の投機で大もうけした奴か!
家の資産運用を任せている三倉屋も一枚噛んでいたな。何の用で来たんだ?」

「さぁな。それこそ豊長閣下に聞いた方が良いだろう。
俺の個人的な見解だと軍部――というより五将家と和解したいんじゃないか?
委員長はあの政党の中でも穏健派であり、かつ最大出資者だ。党を割る覚悟を見せてでも軍との対立を避けたいのだろうよ」

「そうか……まあ今は関係ない事だ。取り敢えずは仕事だな、手伝ってくれるのだろう?」
 ――この件は御祖父様へ一応報告するだけでいいか。
そう思い直し、豊久は目先の大仕事にとりかかる。

「あぁそうだな。こちらから今すぐに提供できるのはこのくらいだ。
大した情報ではないが、そちらのものとすり合わせれば存外に使えるかもしれん」

「これは――広報室の予定表か」

「あぁ、直前の予定変更や、どれを伏せるつもりだったのかも書いてある。
広報室の関係部署だけしか閲覧できない機密文書だ――いや、だった。かな?
幸い致命的な情報はまだ無事だが、一度腐ったら崩壊は早いものだ。このままじゃ怪しいものだよ」
 常の快活さを感じさせない倦み疲れた口調で語った
「その為の監察課だよ。官房の監察官室まで出張ってきたら面倒になる。そうなる前に処置するんだ」
 そう云いながらも豊久は渡された書類に素早く目を通す。

官房の監察官は陸
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