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キャラメル
第一部
第一章
キャラメル
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私たちが
 歌いこなせるレベルじゃないのだ。分かんないのかなぁ?そのうえでこの歌選んだんじゃないの?
 
 そんなことを五十里さんが隣りでずっとぼやいている。
 まぁまぁ。と言って笑うけど、内心では皆に聞こえやしないかと冷や冷やしていた。
 どうせなら皆に向かって言えばいいのに、そう言いかけた時、

 「ねぇ、あんた達さぁ。」
 と、キレかけた五十里さんの声が聞こえた。
 
 「別に歌いたくないなら歌わなくていいけどさぁ、邪魔なんだよね。誰かが注意すると、
  伴奏もしててつまらなくなる。マジでテンション下がる。だから、出てってくんない?
  で、委員長さんもさぁ、いちいち中断させんでよ。大きな声で歌え、とかの指示は
  澄田さんの役目でしょ?違うの?推薦したのあんたでしょ?
  で、歌いたくない奴は出てけ!以上。」

 「五十里さんて、意外と口悪いんだね。まぁ、そんなことはどうでもいいんだけど、
  澄田さん指揮始めてくんない?」
 し〜ん、とした空気を破ったのはさっきまで一番ふざけてた男子だった。
 
 「あ、はい。」
 腕をあげると皆の足が肩幅に開き、視線が一点に集中する。
 五十里と、目を合わせ、指揮を始める。顔を皆の方に移した時、五十里の言葉の強さを思い知った。
 一斉に呼吸をする音が響く。
 
 そっか、歌は最初の言葉だけ揃えようと思ってもダメなんだ。
 「スっ」と、息を吸うタイミングも揃ってるとこんなにキレイなんだ。
 指揮って合唱ってこんなに楽しいんだ。
 ナノは今までで一番きれいな合唱の練習中に思い浮かんだのがそんなことだった。

 「みんなやればできるのに。」独り言なのか、皆に向かっていったのか、曖昧な声の大きさで
 五十里が言った。
  
 みんなやればできるのに・・・か。確かにその通りだね。

 あと、二週間もしないうちに文化祭が始まる。
 それまでに何とかなりそうで良かった。
本当に何とかなるとは決まったわけじゃないけど。

「あの、とてもきれいだった。今までで一番。」
シンとした雰囲気の中で自分の意見を言うのは少々苦手だが

 
 

 
 
 
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