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ん!!」

 立ち上がって化け物に身体を向ける。
 アレにやられればただじゃ済まない、それは本能で理解出来た。
 だと言うのに何故だ――――どうにかなってしまう気がするのは。

「酷いデジャブだ」

 4m、3m、2mまで近づいて来たところで、無意識に身体が動き腕を振るった。
 俺の動きに重なるように背後に居る何かも腕を振るった。
 刀身に鎖が巻き付いている剣――――と言うより鈍器が異形を打ち据える。

「よう、お前何だい?」

 霧散する異形を一瞥して、俺は背後の何かに語りかける。
 フードつきの白い外套で全身を覆い隠したそいつは虚空で身じろぎもせずに浮かんでいた。

"我は汝……汝は我……"

 腹の底から響いて来るような低い声でそいつは言った。
 同時に俺も理解する。

「カルキ、か。何だかなぁ……」

 フッと浮かんできた何かの名前。
 俺が名を呼ぶとカルキは夜の闇へと溶けていった。

「う、裏瀬くん……?」
「あん?」
「裏瀬くんって――――ヒーローだったの?」

 フェザーマン! とか言って妙なポーズを取る公子、かなりテンパっているらしい。

「生憎と日曜の朝に三十分で悪党を〆る仕事はしてないよ」
「じゃ、じゃあ今のは!?」
「さあ? 俺もよく分からないから、答えは返せそうにない」

 分かっているのはこれも既知で――――予定調和だと言うこと。
 見えない繰り糸で動かされているような不快感。
 …………何て夜だよまったく。

「……裏瀬くんって、不思議な人だよね」
「そう言うキミも大概だと思うがね」

 あの夢、唯一不快感を抱かなかった既知、公子の方がよっぽど不思議だ。

「そういやさ、さっき何か言い掛けてなかった?」
「え!?」
「何だったの?」
「い、いやぁ……アハハ、何でもないよ。気にしないで」

 赤みがかった頬を掻きながら誤魔化す公子。
 ああ、分かってる。
 さっき彼女が言い掛けたことくらい俺にだって分かるさ。

"一目惚れって信じる?"

 俺はそこまで鈍い方じゃない、更に言うならばその問いに対する答えはYESでありNOだ。
 ぶっちゃけた話、容姿に惚れる一目惚れはあるだろう。
 だが、それだけだ。
 それ以上はない――――と思っていた。
 だがどうだ? 俺が彼女に抱いている想い、彼女が俺に抱いている想い。
 それは断じて容姿によるものだけではない。
 心を預けて良い、そう思えるほどに俺は……
 会ってそんなに時間も経っていないのに、おかしいだろう?
 会って間もない人間の総てが好ましく思うなど異常だ。
 公子はそれを好意的に捉え、俺は否定的に捉えている。

「どうしたの? 顔色悪いよ?」

 
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