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ーダー通りにミルクティーのボタンをプッシュし、缶を放り投げる。
「じゃ、そこのベンチで話そうや」
「は、はい!」
小動物のように俺の後ろをトテトテと着いて来る少女。
総ての動きが俺の……ああ、気持ち悪い。
「俺は裏瀬《うらせ》、キミは?」
「私は有里公子《ありさときみこ》って言います」
「公子ちゃん、ね。よろしく」
俺も戸惑っているが彼女も戸惑っているようで、複雑な顔をしている。
それでも隠しきれない高揚感のようなものが見え隠れしているのは……きっと俺も同じだろう。
「その制服、月学だよね? 俺もなんだ。けど、公子ちゃんみたいな子は見たことないな」
最低限の出席しかしてないから、俺が知らないだけかな?
まあ、どの道そろそろ辞めるつもりなので、どちらでも構わない。
「私、転校生なんです。えっと、裏瀬くんは……」
「俺? 俺は二年だよ。殆ど行ってないがね」
「そうなの?」
「ああ、俺そんな真面目な感じしないだろ?」
髪こそ染めていないが、左耳と口にあるピアスだけ見ればヤンキーそのものだ。
「アハハ……の、ノーコメントで」
困ったように笑う彼女だが、別に俺は指摘されたところで怒る気はない。
「公子ちゃんってさ、割と顔に出るタイプっしょ?」
「そ、そうかなぁ……」
「ああ。顔に書いてるぜ、怖そうなヤンキーだって」
「そんなことないよ!」
憤慨したように頬を膨らませる公子、ますます以って小動物みたいだ。
「良いって良いって。実際のとこ、間違ってるわけじゃねえし」
意図はともかくとしてやってることだけみれば不良――より性質が悪いだろう。
四、五回パクられようとも御釣りが来るくらいだ。
そしてそれだけのことをやって尚、既知感を消せないなんて……いっそ滑稽だ。
「……不良さんなの?」
「そ。否定出来る要素は何一つない」
既知感が齎すものは総じて良いことはない。
どれだけ必死ここうとも、終わってからガッカリがやって来るのだ。
そんなもの喜べるはずもない。
だと言うのに――――
「ん、何か言いたげだな。良いぜ、言ってみなよ。俺は別に怒らないし」
「えっと……裏瀬くんはさ、不良なのに……」
「なのに?」
「――――全然楽しそうじゃないよね」
俺はこの子から感じる既知を心地好いものとして捉えてしまっている。
「……ちょっと、意味分かんないな」
「勝手な偏見だけど不良ってさ、何かから逃げてるんだと思うの」
「それで?」
「悪いことやって逃避して、目先の楽しさだけを追っている」
「まあ、当たってるって言えば当たってるな」
「だから表面上は何だか楽しそうに見えるんだ」
「俺は楽しそうじゃな
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