Episode3 理由
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「げっ!…っとと、我慢するつもりが」
「…おい。げっ、とはなんだよ?げっ、とは!」
とはなんだ、とアキは言うが正直仕方ないと思う。それほどに強烈なインパクトを俺に与えたのだ、あの時のデュエルは。
そんな俺の心中を察しているわけもないだろうアキが俺に詰め寄る。相変わらず男なんだか女なんだかはっきりしない顔立ちだ。ただ、今のキッと吊り上がった眉毛はどちらかと言えば男っぽい。…って言うか、本気で怒ってるっぽい。
「こら!なんとか言えよ!」
「やー、なんとかと言えっつわれても……なんとか?」
「なっ!…僕を馬鹿にしてるのか、してるんだな、そうに違いないな!」
ほぼオートでしてしまった返事がアキの機嫌を大変損ねたらしく、彼(もしくは彼女)の手が左腰に装備してある細身の剣に伸びた。
昔の俺、より正確には8層以前の俺ならばここで既にビビりまくっていたことだろう。だが、8層のある出来事で俺の《度胸》は飛躍的にレベルアップしている。それこそスキル的に表すならば練度50から一気に500あたりまで。
だから、どーせ圏内だし手出せないんだろ?ぐらいの気持ちでアキのことを眺めていたのだが、剣が僅かに引き抜かれた途端俺のメンタルは簡単に動揺を始めた。如何せん、俺の度胸は習得率が半分なので実際的に行動に移られるのに弱い。
が、抜剣のモーションはアキの情けない「あうっ…」という声と同時に終了した。剣の柄から離した手を、叩かれたばかりの頭に乗せたアキが後ろの連れを振り返った。
「なにすんだよぅ、ジン〜!痛いじゃないかぁ!」
「いや、今のはいきなり剣を抜こうとしたアキが悪いよ。…そっか、君はアニールブレードの時のカイト君、だね?」
確認のためか、やや問い掛け気味になった語尾に首肯を返す。
そう、彼ら二人とは俺が第一層ホルンカの村周囲で曲刀使いクラインとその仲間達とともに《森の秘薬》クエを受けていた時に出会っている。さらにその時俺は、貴族っぽい方ことアキとのデュエルを経験している。その結果は惨敗。だからこそ、負けてから懸命に追い掛けたからこそ、今の俺がいると言えば言えないこともないがそれを認めるのは癪なので絶対しない。
ともあれ、俺と違ってこちらに大した印象を受けていないであろう二人が揃って俺のことを覚えていたことには驚いた。二人とも記憶力いいんだなぁ、なんて思っていた俺の上着の裾が控えめに引かれる。
「あのっ、…だれですか?」
声も控えめにアカリがそう俺に問う。ジン達と俺が話し始めた辺りですぐ後ろに隠れていたのだった。そういえば、《本当に》初めてアカリに会った場所もホルンカであるから、何となく知り合いのような気がしてしまっていたが、アカリと彼らは赤の他人だ。俺もほとんど同じようなものだが、彼ら
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