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或る皇国将校の回想録 前日譚 監察課の月例報告書
六月 野心なき謀略(一)
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への投資の増加が行われ馬堂家もその投資参加し、大いに利益を受けていた。
 結局のところ、彼らの主導した事業の大半は商人達だけでなく、五将家が財界と結びつきを強める事に利用され、そして五将家が軍縮の口実として渋々と(内心はともかくそう振る舞った)天領直轄の鎮台削減を受け入れ、足並みをそろえて自分たちの鎮台も似たような削減を行った後は、執政府に影響を及ぼせる地位から追い落とされることとなったのである。五将家にとって陪臣将校達の怒りの矛先を逸らすには丁度良かったのだろう。
「随分と五将家のお偉方がテコ入れするようだからな。皇民党が五つに分裂しない限りは勝つだろう」と言って堂賀は僅かに口を歪める。
 馬堂家当主である馬堂豊長退役少将も駒城の利益代表者として皇民党に接近し、駒城派の勢力拡大に尽力している事は堂賀も豊久も知っている。
「それにしても、かりにも将家の将校二人が軍縮に愚痴を溢して、衆民院選について語るとは――今日も今日とて太平の世、だな」

「五将家体制擁立直後なら武装蜂起の相談だった――のでしょうかね?
確かにこれは随分とのんきなことですね」と彼の若い副官も嬉しそうに笑った




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六月十三日  兵部省陸軍局庁舎 人務部監察課事務室
監察課主査 兼 首席監察官附き副官 馬堂豊久大尉


 馬堂豊久大尉は監察課執務室の机にこの数日の間噛り付きであった。四・五月の間に頻発した不祥事や軋轢、内部告発に対する人務部の事後処理を終え、次は五月に配属された新人士官達達によるそれの繰り返しにより、細やかながら(或いはそう見せかけた)十数名の将校達の異動企画の為に人務部は再び悲鳴を上げていた。それを引き起こした監察課もその例外ではなかった。

「来月分の感状の発行予定表とそれの考課一覧への反映は終了――と。後は出向中の監察官達に送る連絡書面ですが――企画官殿、まだですか?」

同じく課内の庶務を担当――というよりも統括している企画官の三崎は不機嫌そうに答える。
「まだだ。出張中の方にそのまま隣接州の鎮台に行ってもらう必要もあるから派遣されている監察官達も現在地の確認を取ってから日程を組まなきゃならん。
適当なところで本省に一度戻らせないと向こうもこまるだろうし――取り敢えずは確認がとれてからだ。半日ばかり待てば返答が来るはずだ。導術様々だな」

「了解です。それならば今のところはこちらで首席監察官殿と課長閣下に判子を貰って課長の所におくれば終わりですね。今月はなにごともなし、で終わるといいが」
監察課課長は監察課の執務室に姿を現すことはめったにない。人務部次長として年若い背州公子の代わりに先任次長である人務第一課長と共に人務部を取り
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