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或る皇国将校の回想録 前日譚 監察課の月例報告書
六月 野心なき謀略(一)
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の経済発展とそれによる経済格差への対策により、鎮台の縮小が進む以上、彼らが付き従うものにポストを与えるには、必然的に中央政府の予算にしたがった中央省庁の文官、および兵部省・軍監本部そしてそれらの付属・外郭機関へと浸透していくことになるからだ。
つまるところ一見は独自の戦力を独立した財源によって保有している五将家であっても陪臣たちを養い、相応の栄達と昇進を保障するためには執政府と衆民院によって決定される予算に依存せざるをえないのだ。
 更に、五将家の体面を維持する為に必要な私的な収入の為には天領からの利益誘導と出資を行わなければならず、これもまた衆民院に多大な影響力を持つ商人達との?がりをもち、相互に影響しあう事となる。
 結局のところ、世俗に生きる以上は経済からは逃れられず、ましてや政治に携わる以上は納税者の代表者という名分を背負った者たちからは逃れられないからである。
         ――閑話休題――

「最初は地方の産業振興に関する大規模な投資優遇を行った事で支持を得ていましたが、大規模な街道整備事業の為に一部の議員達が増税を示唆した所為で分党騒ぎ、
代わりの財源を求めてに皇都・龍州の更なる軍縮を推し進めた所為で珍しく足並みのそろった五将家の圧力。早々に解散・総選挙になりそうですからね。――良くも悪くも中産階級から支持を受けた地方の名士たちの寄合だったって事でしょう」と馬堂豊久が肩を竦めて見せた。

「こちらの主家も当初は後押ししていたのだがね。
流石にやり過ぎだ。目先の事しか考えないからあぁなるんだ」
 
「お、おう」

「そ、そうですね」
 三崎が鼻を鳴らして言うと首席監察官とその副官がさりげなく目を逸らす。

安東家は東州の嘗ての栄華を忘れられずに戦乱で荒廃しきった恩賞として与えられた東州に本拠を移した家である。
 もっとも、その復興に家産が潰れかけ、海良の者達の内政能力と安東吉光伯爵をはじめとする中央官僚による国策の誘導によってどうにか復興も軌道に乗りはじめたところである。

「何が云いたいのか分かるがね。東州の産業は随分と回復してきたのだぞ?
天領からの投資が続く限り十年もすれば東州乱前以上の工業地帯となる。
無論、食糧の自給率を犠牲にしたうえでの措置だがね。これは前例がある以上はどうしようもないが、それこそ叛乱など馬鹿げた事をしない限りそろそろ収支が黒字になり始める頃合いさ。
まぁなんだ。そうした法制措置が整った以上、民友会の連中は用済みだ。ましてやこれ以上の軍縮は幾らなんでも受け入れられない。東州鎮台は必然的に最低限の維持が必要だとしてもな」

「おいおい、二人とも散々利用しておいてそれは酷い言い草じゃないか」
にたり、と堂賀が笑って云った。
主に民友会の主導した事業によって龍州、東州
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