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占術師速水丈太郎  ローマの少女
第十九章
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「ハプルブルク家然り」
「ナポレオン然り」
 アンジェレッタも自分で語る。イタリアが統一されたのは十九世紀後半であり長い間多くの小国に分かれていた。そこに様々な勢力が介入してきた歴史なのである。ローマとて例外ではなくビザンツ帝国に焼かれた時もあれば神聖ローマ帝国の傭兵達に焼き払われたこともある。血を多く吸ってきた街でもあるのだ。
「多くの歴史上の人物がダラゴーナ家に関わってきていますよ」
「ふうむ」
「今もね」
「それを聞くとどうやら私は無事では済まないようですね」
「さて、それはどうでしょうか」
 うっすらと笑って即答せずに楽しむ。
「そうともばかりは限りませんよ」
「こういう時占い師は楽ですね」
 速水は少しおどけて述べた。といっても本心からではない。あくまで場をリラックスさせる為だ。
「誰にも秘密を言うことがないのですから」
「神父も占い師も同じです」
 アンジェレッタは言う。
「人の心の奥底を聞かされるのですから。ただ」
 そしてここでまた言った。
「そこに救いを与えるのか道を示すのかという差です」
「そういうことですね」
「少なくともそれが表です」
 裏のことはあえて言わない。言わない方がいいものもあるのだ。
「さて、では降りますか」
「ええ」
 宮殿の扉に着いた。黒い服の使用人に開けられたドアから出る。そしてアンジェレッタに連れられてその屋敷の中へと入るのであった。


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