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銀河英雄伝説〜悪夢編
第三十一話 オーベルシュタイン、お前は頼りになる奴だ
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無いという事か……、何と愚かな……。私はこんな愚かな人物に会いに来たのか……。虚しさが胸に満ちた。

二十分後、私はまた元帥府の前に居た。あの後殆ど話らしい話も無く私は元帥府から出ていた。仕方ない、リヒテンラーデ侯の所に行こう。侯は多分私が女であると言う事だけであまり歓迎はしないだろう。それでも受け入れてはくれるはずだ。それにしても何と愚かな……。気が付けば私は笑っていた。彼の愚かさに、そんな彼を頼った自分の愚かさに……。



帝国暦 488年 2月 5日  オーディン  ヴァレンシュタイン元帥府  エーリッヒ・ヴァレンシュタイン



応接室の窓からヒルダが立去っていく姿が見えた。当てが外れて多少落ち込んでいるか、まあ人生とはそんなもんだ、ガンバレ。お前は間違ったんだ、俺とリヒテンラーデ侯の間に有る溝を理解していなかった。それを理解していればもっと違った援助を申し出ただろう。食料援助か、あるいは兵力の提供か、それなら受け取ることが出来たのに……。事前調査が不足していたな、誤った理解からは誤った解しか出てこない。まあ今回の失敗を糧に次は頑張るのだな、次が有ればだが……。

「宜しかったのですか、随分とがっかりしていましたが」
「……」
「なかなかの見識だと思いましたが……」
メックリンガーが俺に問いかけてきた。いかにも残念そうな表情をしている。戦略家の彼には惜しいと思えるのだろう。

「構いません、貴族の事はリヒテンラーデ侯に任せましょう。痛くも無い腹を侯に探られたくないんです」
「なるほど、確かにそうですな」
「迷惑ですよ、私は権力など欲していないんです」

俺が元帥、宇宙艦隊司令長官になってからリヒテンラーデ侯の俺に対する不信感が強まった。特に宇宙艦隊の司令官人事を下級貴族、平民で固めた事がその不信感に拍車をかけたらしい。まあ実戦部隊のトップだからな、何時かクーデターを起こすんじゃないかという不信が有るのだろう。そしてエーレンベルク、シュタインホフもその不信感を共有している。

平民だという事がその不信感を強めている。要するに連中から見ると俺は異分子なわけだ。原作でヤンを中心とするイゼルローン組が中央の連中に疎まれたようなものだろう。何処か自分達とは違う、そう思われたのだと思う。ヤンの場合は価値観だろう、俺の場合は帰属母体だろうな。要するに御育ちが違うということだ。

今の時点でヒルダを味方にする等あの老人達の不信感という火に油を注ぐようなものだ。百害あって一利も無い。というわけで俺は戦う事にしか興味の無い、政治には全く無関心な馬鹿な軍人の役を演じている。当然だがリヒターやブラッケと接触はしていない。だから平民達への改革案を提示する事も出来ないでいる……。

内乱は原作よりも長引くかもしれんな。だが
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