暁 〜小説投稿サイト〜
占術師速水丈太郎  ローマの少女
第十六章
[2/2]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話
て差し上げますが」
 さっとまたカードを出してきた。今度は悪魔のカードであった。タロットの十二番目のカードである。不気味なカードなのは確かだが解釈次第で様々に意味が変わるカードである。
「如何ですか?」
「わからないわね。私がどうして帰らなくちゃいけないのかしら」
「やはり。無駄ですか」
 ルチアーナの言葉と目を見て述べた。だがそれもまた既に予想していたと言わんばかりの態度であった。それが声からもわかった。
「残念なことですが」
「けれど今はいいわ」
「むっ」
 彼女の言葉が変わったのを見逃さなかった。構えを変えてまたカードを携える。
「また今度御会いしましょう」
「どちらへ」
「とりあえずはここから去ってあげるわ」
「停戦というわけですか」
「そうなるのかしら。貴方達の世界の言い方じゃ」
 魔界では違うということなのだろうか。少なくともこちらの世界の摂理とは違う言葉であった。
「それじゃあ」
「くっ、逃がすわけには」
「いえ、もう間に合いません」
 速水が言っている側からルチアーナは闇に覆われていった。そしてその中に消えていく。後には普通の夜の世界があるだけであった。

[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ