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恋姫無双〜劉禅の綱渡り人生〜
とある忍びは大いに悩み、劉禅は城に拉致られる
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派な事を言うが、戦では女の背に隠れるだけであり、文武に才があるわけでもないので正直見苦しい。これなら、自ら賊の中に飛び込んだ劉禅の方がよほど好感が持てるというものだ。
 いくら首領が北郷に恩があると言っても、限度がある。現在の北郷は、宮中で酒池肉林状態だ。蜀の主であるはずの劉備や関羽なども誑かされ、かつての旗揚げ当時の威容は見る影も無い。しかし、劉禅が反乱を起こしたのも事実であり、父の遺言や姉に背いた不孝者であるのも事実だ。それに、劉禅につけば、歴戦の武官や『忍び』の同胞も敵に回すことになる。だからこの忍びは悩んでいたのだ。
(はっきり言って北郷は嫌いだ。しかし、天の知識によれば劉禅は蜀にとっては良くないと言うし……。ああもうっ、一体どうすればいいんだっ!)


 目が覚めると、目の前に知らない天井が広がっていた。
「……此処は何処だ?」
 俺はあたりを見回す。しばらくして、村長の家だということがわかった。
「気付かれましたか」
 俺は声をかけられ、顔を向ける。一人の娘が部屋に入ってくるところだった。俺が身代わりになった、村長の娘だ。その娘はひとしきり礼を言う。ここまで感謝されるのは初めてだ。俺は照れくさくなり、立ち上がって部屋を出ようとする。しかし、かすかに視界が歪み、壁に手をついた。
「無理しないで下さい。まだ病み上がりなんですから」
 娘は慌てて俺を止める。
「……病み上がり?」
「そうですよ。貴方はあの後、高熱で倒れたんですよ」
 言われて思い出す。洞窟の中で、倒れたことを。
 その時、部屋に普浄が飛び込んできた。
「劉禅殿、ある軍隊がこっちに向かってきているみたいです!」
 慌てた口調で普浄は言う。
「どこの軍隊か分かるか?」
「分かりません。しかし蜀に属する軍です。急いで此処を出ましょう!」
 今捕まったら、旅をしてきた意味がなくなる。俺は急いで身支度をして、娘に別れを告げた。
「貴方はまだ病み上がりなんですよ! 今無理をしたら……」
「悪い、色々と事情があるんだ。この礼はいずれまた」
 俺は普浄と共に村長の家を出た。しかし、間に合わなかったらしく、とある軍と鉢合わせすることになった。
「おい! どこに行くつもりだ!」
 軍の中から一人の武将が進み出て、俺達に声をかけた。歳は二十代半ばぐらいの、誰もが見惚れるような美女だった。
「げ、厳顔っ!」
 俺はその武将を見て声をあげる。それに対して厳顔は、つかつかと俺に歩み寄り、拳を一発浴びせた。
「ぐえっ!」
「馬鹿者っ! 真名を交換したのだから、ワシのことは桔梗と呼ばんかっ!」
 一発で崩れ落ちた俺を担ぎ、厳顔は普浄にも声をかけた。
「お主らに話がある。城まで来てもらうぞ!」
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