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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第七十九話 フェザーン謀略戦(その1)
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領主府に向かいます。フェザーン駐在武官のヴィオラ大佐が十時にルビンスキー自治領主との面会予約を取り付けています。我々はそれに同行する。大佐とは宇宙港で落ち合う予定です」
ヴィオラ大佐……、ちょっと複雑です。あんまり会いたい人じゃありません。

「……他には」
「自治領主府でルビンスキーと会談し帰る事になります。問題は帰りでしょう、簡単には帰れない、我々はルビンスキーを人質にして撤退する事になります」
「なるほど、結構楽しくなりそうですな」
楽しくなんて有りません! ルビンスキーを人質にして撤退って一体何考えてるんですか! それじゃあ私達、お尋ね者です。それなのに准将は本当に楽しそうに笑ってる……。

「しかし、我々はフェザーンの地理に明るくありません。行きも帰りもその点が不安ですが」
リンツ中佐の言葉にローゼンリッターのメンバーが頷きました。私も不安です、土地勘が無ければ逃げる事も戦う事も出来ません。

「心配ありません。運転手はヴィオラ大佐が用意します」
「それは助かりますな」
シェーンコップ准将が頷くと他の皆に視線を向けました。皆がそれぞれの表情で頷いています。

「他にも御客さんが来るかもしれません」
「客?」
問い掛けた准将にヴァレンシュタイン提督が笑みを向けました。ちょっと、怖いです。
「銀河帝国フェザーン駐在高等弁務官、ヨッフェン・フォン・レムシャイド伯爵……」

一瞬間が有った後、シェーンコップ准将がクスッと笑いました。提督もクスッと笑います。
「なるほど……、丁重におもてなしをしないと」
「そうです、伯爵閣下は貴族に相応しい最高級のもてなしを要求すると思います。失礼の無いようにしないと」

二人の笑みがだんだん大きくなります。拙いです、最悪です。私は貴族なんて好きじゃありませんし、レムシャイド伯なんて知りませんがそれでも伯爵が可哀想に思えてきました。皆も呆れたように二人を見ています。

「ゼッフル粒子を使う場面が出そうですな」
「その場合は火器が使えません。全員ナイフを二本用意させてください。一本はサバイバル、もう一本はバリステックを」
「了解しました」
バリステック? 何だろう、サバイバルは分かるけど……。全員って私も持つのかな? 持つんだろうな、私、ナイフは自信ないんだけど……。

「あの……、バリステックって何でしょう」
質問するんじゃなかった。皆の視線が痛い……、でも本当に知らないんです。ややあってリンツ中佐が口を開きました。

「ミハマ中佐、バリステックナイフというのは刀身を前方に射出することができるナイフだ。大体十メートルぐらいの距離ならば相手を殺せる。ゼッフル粒子を使えば火器は使えん、火器の代わりにバリステックナイフを使う、そういう事だ」
なるほど、あれか……
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