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銀河英雄伝説〜悪夢編
第二十九話 これから必要になるのは喪服だろう
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う、その見識を陛下のために役立ててはくれぬか」
「……」
「陛下はまだ幼い、陛下の御守役を卿に頼みたいのだ。そうなれば先帝陛下もお喜びであろう、どうかな、受けて貰えぬか」

上手い! 座布団二枚は上げられるな。御守役なら常に宮中に居なければならんから宇宙艦隊司令長官は辞める事になる。この爺さんには野心も無いから幼君を預けても安全だろう。年寄りには子守が良く似合う、エルウィン・ヨーゼフ二世も爺さんになついで少しは性格が良くなるかもしれん。

「有難い御話ですが私は引退したいと考えています」
「引退……」
「はい、フリードリヒ四世陛下が亡くなられて何と言うか虚しくなりまして……、この先は領地に戻り静かに余生を送りたいのです。お許しを頂きたいのですが……」
リヒテンラーデ侯が軍務尚書、統帥本部総長に視線を向けた。二人が軽く頷くとリヒテンラーデ侯がそれに答えるように頷いた。

「そうか、残念ではあるが仕方ないな」
「お許しを頂きました事、有難うございます」
皆神妙な顔をしているが内心では大喜びだろうな。まあ大喜びでは無くてもホッとしているのは間違いない。俺だってようやくこの老人から解放されたという思いが有る。大体誰も引き留めないんだから……。

「つきましては後任の宇宙艦隊司令長官ですがヴァレンシュタイン上級大将にお願いしたいと思っております」
おいおい爺さん、何を言い出すんだ。リヒテンラーデ侯もエーレンベルク元帥、シュタインホフ元帥も驚いているぞ。いかんな、このままだと俺が言わせていると勘違いされかねん。危険視されるのは御免だ。

「閣下、小官はその任に就ける立場では有りません。何を仰るのです」
「いやいや、卿以外に適任者はおらんじゃろう。卿が平民だという事は分かっているがその武勲は誰もが認めるところ、それに卿は先帝陛下よりグリューネワルト伯爵夫人を下賜されたのじゃ、その信任は並みの貴族など到底及ばぬ。元帥、宇宙艦隊司令長官に就任する資格は十分に有る。……如何でしょうかな」

強引だな、爺さん。あんた、本当にグリンメルスハウゼンか? 俺が驚いているとリヒテンラーデ侯、エーレンベルク元帥、シュタインホフ元帥も少し驚いたような表情で顔を見合わせている。
「……どう思うかな?」
リヒテンラーデ侯がエーレンベルク、シュタインホフ元帥に問い掛けた。二人は未だ顔を見合わせている。

「小官は反対は致しません」
「小官も軍務尚書と意見を同じくします」
「なるほど、……ではヴァレンシュタイン総参謀長を元帥に階級を進め宇宙艦隊司令長官にしよう」
不承不承だな。爺さんに押し切られた、そんなところか。

こいつ等は俺が元帥になる事も宇宙艦隊司令長官に就任する事も喜んではいない。こいつ等は味方じゃない、いやむしろ敵だろう、油断は
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