ある約束の戦い (前)
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スが住んでいたボロアパートも壊れてしまい、もっと良い所に移るようアルシェイラが言ったにも関わらず以前と同じ様な所に住居を構えている。
そんな所にアルシェイラが掃除という名の実の伴わない行為をしに来るのもまた以前と同じである。
「それよりリン、あなたあの約束忘れてないわよね」
掃除機を使いながらリンテンスに話しかける。
掃除機の音を遮断するように背を向けていたリンテンスもソファに横になったまま向き直る。
「覚えていたのか、てっきりもう忘れたかと思っていたが」
「忘れたわけないでしょ、リンが怪我してたから待ってたんでしょうが。って何よその顔、忘れてなんかないわよ女王なんだから」
「まぁいい、それでいつやる」
「今からでもいいわよ、って言いたいけど無理ね。準備がいるし明日でいいわよね」
「構わん」
「勝った方の言うことを聞くっていうのも忘れんじゃないわよ」
「わかっている、終わったならさっさと帰れ」
翌日、二人はグレンダン近くの荒野で向き合っていた。
「リンと戦うのも二度目、今回はすぐ終わらないでよ。私が勝ったら天剣らしくもっといい所に住んでもらうわ、侍女が逃げ出すようなのはだめよ」
一度目はリンテンスがグレンダンに来た日。勝負は一瞬でつきリンテンスはアルシェイラにかすり傷を負わせるのが精一杯だった。
それ以来リンテンスが再戦を望むことはなく、天剣となり老性体を切り裂き天剣最強の名を欲しいままにしてきた。
だが彼のスタイルは変わることなく薄汚れたコートに紫煙を燻らせるという地位にそぐわないものだ。それは今、アルシェイラを目の前にしても変わることはない。
「勝ってから言え」
煙草を左手に挟みながら言う姿に気負いといったものは感じられないが同時に強敵を前にした緊張もない。
「じゃあ、いくわよ」
宣言と同時に右手を振りかぶり降り下ろすと共に剄を射ち出す。一瞬でリンテンスの下に届き爆発を起こす。
「要するにあそこでやりあってるのが陛下と糸の旦那で俺っち達はもしもの時グレンダンを守る壁ってことなんさ」
「ええ、市民にシェルターに避難してもらったのも万一に備えてのことです」
「にしてもそこまでして戦いたいものなんかさ」
呆れるハイアが同意を求めるが反応がないのに周りをみると真剣に戦いを見詰めていた。
「ま、この程度で終わるわけないわよね」
土煙が晴れた先ではリンテンスが何事もなかったように煙草を吹かしている。
綱糸が幾重にも絡み合い衝剄を受け止めたのだ。
「前よりも威力は上がったが相変わらず粗削りだな」
「ムッカ、そんな台詞は勝ってから言いなさいよ」
「では行くぞ」
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