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IS 〈インフィニット・ストラトス〉〜可能性の翼〜
第一章『セシリア・オルコット』
第十二話『宿りし絆(こころ)』
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オルコット家を守りたい”だけでした。
 でも……、候補生への階段を上がっていく中で、それの理由から“負けられない”という意地が生まれて、その意地が……、自分の“自負”に変わっていって……、最後には……!」
言葉はここで切られた。
掛け布団に置かれた手が、きつく握られていく。
自分の守りたいものを守るために、貪欲なぐらいに力を得ていったオルコット。
だがときに、人は他人とのかかわり方ひとつで、力と自我のバランスを崩壊させてしまうことがある。
オルコットの場合、歪んだ親類関係から他人を信用する意味を見失っていった。
見失った意味を、今度は自分の“力”で補い、ただ自分の強さだけを信じるほかなかった。
そうして得た力と実績は、やがて彼女の中で“名家を背負って戦うという自負”に変化し、その自負もやがて“自信”に変容する。
この一連の変貌が最後に行き着いた先――、それが“名家の娘たる自分こそ強者である”という『傲慢』だった。
「わたくしは……、わたくしの一番嫌いだったはずの……、親族と同じ『上辺だけの人間』に成り下がっていました……。
 こんなわたくしなんて、オルコット家の娘……失格ですわ」
そう言うオルコットの瞳から、雫が流れ落ちていく。僅かに肩を震わせ、声を押し殺して、泣いている。
「わたくしは……わたくしは……!」
そしてまた、顔を手で覆った。
まただ。また、ただの『か弱い女の子』になっている。
……いやちがう、多分これが“最初のオルコット”だ。
セシリア・オルコットという少女が、今に至るまでの最初にある、両親を亡くして家を守る決意をした頃の彼女だ。
自分の居場所を守るために、必死に何かをはじめようとした、はじまりの日の彼女なのだ。
か弱く見えるのは、彼女の“時間”がそこで“止まっている”が故。
ここに来て、俺はオルコットの正体に、ようやくたどり着いた気がした。

「もういいんじゃないか……?」
俺の言葉に、オルコットのすすり泣く声が止まった。
「それ以上自分を責めたところで、あとはただ痛いだけで何もないぞ」
ホント、自分の知っている感覚がいろいろあると、変に説教臭くなって嫌になる。
「でも……、わたくしは……」
オルコットは覆っていた手をわずかに離し、涙にぬれた顔をこちらに覗かせる。
「……間違ったんなら、勘違いしていたって気付けたなら、そこからもう一度始めりゃいいんだ」
そう言った俺の顔を、オルコットは不思議そうな様子で覗いてきた。
「だって、まだ高校一年の4月だぜ。アンタだって、候補生として歩きだしたばかりだろ?」
まだ呆然としながらも、オルコットのヤツは口を開く。
「……でも、こんな……、こんな風になってしまったわたくしに…、そんな価値なんて……」
でも出てきたのは、まだ泣き言だけだった。

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