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IS 〈インフィニット・ストラトス〉〜可能性の翼〜
第一章『セシリア・オルコット』
第十二話『宿りし絆(こころ)』
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産争い』である。
オルコット“本家”そのものは、彼女の母親の手腕で隆盛を保っていた。しかし親類一同の生活は、ISが世界に及ぼした影響の“余波の余波”で会社経営が傾き、人によっては倒産にまで追い込まれていったという。
さらにトドメとばかりに、オルコットの母親は万一に備えて自分専属の法律家に遺書を託していたらしく、その内容は『次期当主の決定権をセシリアに委ねる』という文面だったらしい。
こうなると、生きるのに必死な親類はろくな事をしなくなった。
誰もが皆、オルコットすり寄って機嫌を取り、自分こそが次期当主にと見え見えのゴマスリを仕掛けてきたというのだ。
そして他の親類を見ると、言葉は美しくとも互いに罵りあう、見苦しい意地の張り合いを展開していった。
中には彼女を自分の家に軟禁し、自分を認めろと迫ってきたロクデナシもいたという。
十歳を過ぎた子供にでも分かるような泥仕合を見せる大人……、想像したくもないな。
最初は母親の遺言を恨みさえしたという。
だが、醜い親類たちの泥仕合を見続けるうちに、オルコットの中で徐々にある思いが起こりはじめる。
――こんな醜い人たちに、両親の遺したオルコット家を譲りたくはない。
そう語った彼女からは、失意と怒りが滲んでいるようにも感じられた。

――――

「それからわたくしは、必死にあらゆる事を学びましたわ。
 その一環で受けたISの適性検査で高い適正がある事を知り、政府から国籍保持のために様々な好条件出された時も即断しました。
 毎日のように訓練も倒れるくらい積み重ねましたし、時々両親を思い出して、淋しさから膝を抱えもしましたわね」
眼を細めながら、かつての日々を思い起こすオルコット。
「……それでも、わたくしはお母様のオルコット家を守りたかった。
 代表候補生になって、王国の御旗を背負えるようになれば、代表候補生としての権威で親類を牽制できる。
 だからこそ、誰にも負けるわけにはいきませんでしたわ」
一言一言、一語一語ごとに、オルコットの込める気持ちは強くなっているように思えた。
今の彼女の顔は、俺が試合の中で見た『戦乙女』としてのオルコットだった。
しかしそこまで言って、オルコットは顔を伏せてしまう。同時に、顔もさっきまでのオルコットに戻る。
「……でもそうしていくうちに、何時しかわたくしは、自分の実力に慢心していきました」
声が徐々に震え、何かを堪えるように言葉を紡いでいく。
「信じられるのは自分の実力だけ。その実力も、候補生への道に近づくにつれ強くなっていきました。
 ……ですが、同時に“オルコットの家を守りたい”という思いも、自分が『名門であること』への意識に、すり替わっていました」
すっかり俯きになり、その顔も前髪で目元が見えなくなった。
「本当に最初は、ただ“
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