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IS 〈インフィニット・ストラトス〉〜可能性の翼〜
第一章『セシリア・オルコット』
第九話『戦いの決着』
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セシリアは自分の手から逃げた標的を待っていた。
気の緩みは無い、もう相手を見下げることはやめた、今は精一杯勝つだけ。
頭の中でそんなことを、何度も何度も反芻((はんすう)し、討つべき相手が向かってくるのを待った。
今さらながらデタラメな対戦相手だと、セシリアは振り返る。
祖国で激戦を勝ち抜き、ただ“矜持”と“誓約”を胸にIS学園に代表候補生として入学した。
手にしたのは主席入学の名誉、そして確かな“思い”の再認識。
だがそれを、新年度初日に阻んだ“男”が出てきた。しかも理由は“男”というその珍しさだけ。
自分が死に物狂いで勝ち取ったものが、ただの『珍しさ』に負けた気がした。それをどうしても認めたくなかったし、認めさせるわけにはいかないと怒りが込み上げてきた。
だからこそ“名門たるオルコットの娘”という誉れのもとに、自分の努力こそ正しいと見せつけようと考えた。所詮は「女尊男卑」時代の弱い男、実力をチラつかせれば――。
だが“男”は屈しなかった。それどころか、自分の神経を逆なでしてくる根性を見せたのだ。
だから見せつけてやろうと思った、自分がなぜ“選ばれた存在”になれたかを。
そしていざ戦いがはじまると、自分のペースで事が進んだ。だが思った以上に相手は勝負事に対する場数を踏んでおり、自分の十八番であるビット攻撃も思った通りに当たらない。それどころか、目下の悩みの種である“武装の同時運用の未習得”さえ見抜かれている節があった。
そして34分以降の、あの悪夢の展開が自分を襲った。
混乱する頭を冷やしながら、どうにか相手を捉えようと食い下がった。だが“風の怪物(マンティコア)”へと化けた相手は、自分の術中をことごとくする抜けて反撃に打って出てきた。こうして、かつてないほどに自分は追い詰められた。
ゆえに“名門たるオルコットの娘”という矜持を、自分の“(よすが)”を、本国での最終実戦試験のときと同じように“封印”した。
IS操縦者として、連合王国の精鋭として、ただの「セシリア・オルコット」として、全力をもって相対する覚悟を決めた。
苦手な接近戦も、一か八かの賭けも油断なく行使した。相手が不完全であるうちに、わずかな勝機を逃さないために。
だが、その足掻きももうすぐ終わろうとしている。
自分の手をすり抜けていったあの飛び方で、相手はきっとその力を『完成させた』にちがいない。勝機はもはや、風前の灯である。
それでもセシリア・オルコットは諦めていなかった。
勝つために。自分を証明するために。
(――来ました!)
上空から、自分が放ったスターライトmkVの光の軌道を逆走して、青い“風の怪物(マンティコア)”がその姿を現した。
(さぁ、今度こそ閉幕(フィナーレ)ですわ、真行寺修夜――!)

――――

《目標捕捉、
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