第二部
第一章 〜暗雲〜
九十六 〜再会〜
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らに行かれたと申すのだ?」
「長安との事です。気づいたときには、もう……」
十常侍め、流石に陛下に手をかける真似だけはしなかったようだな。
だが、長安に逃れて何をするつもりか。
「申し訳ありません。私がついていながら、何も出来なくて」
「お前が責めを感じる事はない。ただ、奴らの方が悪知恵が働いた……それだけの事だ」
ふと、気配を感じた。
「お兄さん、お目覚めですかねー?」
「……大丈夫?」
部屋の入り口に、風と……恋が立っていた。
「うむ。恋、久しぶりだな」
「……(コクッ)」
意識が途切れる前に見たのは、幻ではなかったようだな。
「幽州にいたお前が、よもや此所に現れるとはな」
「……月と兄ぃ、危ない。そう思ったから、来た」
「そうか。礼を申す」
「……ん」
恋は嬉しそうに、眼を細めた。
「風は、何か報告があるようだな」
「はいー」
チラ、と風は華佗を見た。
「ああ、俺は外した方が良さそうだな。何かあったら呼んでくれ、外に出ている」
「済まぬな」
華佗は頷くと、鍼道具を持って出ていった。
「では聞こうか」
「えっとですねー。まず、宦官さん達の大半を捕らえてあります」
「……どういう事か」
「御史中丞代行の職務に従ったまでですよー。勝手に宮中の財物を持ち出そうとしていましたので、職務権限で逮捕した次第なのですよ」
……そういう事か。
風がその職務を願い出たのも、そして同行をせがんだのもこれで合点がいく。
「だが、よく奴らが大人しく縛についたな?」
すると、風は口に手を当ててほくそ笑んだ。
「いえいえ、威光を笠に着て散々脅されましたよー? 勿論、風は聞くつもりはなかったですけどね」
「ふっ、奴らも災難であったな。して、十常侍全員を捕らえたのか?」
「いえ、張譲さんと趙忠さんにだけは逃げられましてー。行方は今捜して貰ってますが」
大物二人は取り逃がしたか。
身の危険を感じて、己だけが真っ先に……という訳だな。
見苦しいとも言えるが、その身軽さはある意味、賞賛にも値する。
無論、このままのうのうと生かしておくつもりはないが。
「わかった。引き続き、二人の追跡は続けよ」
「御意ー」
そこまで話すと、不意に睡魔が襲ってきた。
「さ、お父様。もうお休み下さい」
「……そうさせて貰う」
私は臥所に横たわり、眼を閉じる。
「……兄ぃは、恋が守るから」
「ああ、頼むぞ」
重ねての身の危険はあるまいが、恋がいれば鬼に金棒という奴だ。
……また、昔の夢を見る事にならねば良いが。
数日後。
「順調のようだな。もう起きてもいいぞ」
「そうか。いろいろと世話になった」
私が頭を下げると、華佗は笑って手を振る。
「なに、これも医者の務め
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