第二部
第一章 〜暗雲〜
九十六 〜再会〜
[1/6]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「土方、覚悟!」
障子を破り、数人の男が侵入してきた。
「攘夷浪士共か……いい覚悟だ」
「はん! 余裕だな!」
「同志の恨み、晴らしてくれるわ!」
少々厄介だな。
退路は……背後の襖のみか。
だが、その前に一人二人、倒さねばなるまい。
兼定に手を伸ばし、鞘から抜こうとした。
……む、抜けぬ。
何かに憑かれたかのように、びくともせぬ。
「死ねっ!」
不逞浪士が、上段に構えた刀を振り下ろしてきた。
クッ、よもやこのようなところで……。
「お父様!」
不意に、声が聞こえた。
そしてその刹那、刀が私の目前に迫った。
「……様。お父様!」
身体が激しく揺さぶられている。
ゆっくりと眼を開けると、そこは見知らぬ天井だった。
「お父様!」
誰かが、必死に叫んでいる。
聞き覚えのある、いや知らぬ筈のない声。
「……月」
「ああ……お父様!」
それは、紛れもなく月本人だった。
「此所は……?」
「はい。洛陽の、私の屋敷です」
少しずつ、意識がはっきりしてきた。
そうか、私は月を庇い、矢を受けたのだったな。
「気がついたか」
月の背後にいた人物が、声をかけてきた。
赤い髪に、澄んだ目をした少年。
「華佗、か」
「ああ。全く、相変わらず無茶をする奴だ」
呆れたように、華佗は肩を竦める。
「矢には毒が塗られていたようだ。幸い解毒は間に合ったが、もう少し治療が遅れれば命に関わるところだったぞ」
「そうですよ。お父様、私を助けていただいた事はお礼を申し上げます。……でも、こんな無茶な事、絶対にしないで下さい!」
いつになく、月は険しい顔をする。
……が、全く迫力がないな。
「後は傷の回復を待つばかりだ。尤も、数日は絶対安静だぞ?」
「数日……? 華佗、私はどのぐらい眠っていたのだ?」
「丸二日だな。俺の見立てでは、後一日ぐらいは眠っているかと思っていたのだがな」
「……そうか」
「ああ、言っておくが絶対安静の意味、取り違えるなよ? 起き上がる事は勿論だが、それ以外にも余計な事は一切考えるな」
釘を刺す華佗。
「そうもいかぬ。寝ているのはやむを得ぬが、確かめなければならぬ事もいろいろある」
「お父様。華佗さんの仰る通りです、まずはお休み下さい」
「月、では一つだけ教えてくれ。陛下は、如何なされた?」
「……そ、それは……」
口籠もる月。
「言いにくければ俺から話してもいいぞ?」
「いえ、大丈夫です華佗さん。……お父様、落ち着いて聞いて下さいね」
「うむ」
月はフッと息を吐き、自らを落ち着かせた。
「陛下は、ご無事と思われます……恐らくですが」
「どういう事だ?」
「はい。陛下は、洛陽にはおわしません」
「……では、どち
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ