暁 〜小説投稿サイト〜
恋姫無双〜劉禅の綱渡り人生〜
劉禅、賊と戦い忍びと会う
[1/3]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
 俺が連れて行かれたのは、洞窟の中だった。確かに、ここなら人にあまり知られていないし、守るのに適している。
 俺は洞窟の内部の様子を窺い続けた。洞窟の中は入り組んでおり、分かれ道も複数存在する。下手に動き回ると迷いそうだ。
 洞窟の奥まった所に、賊の頭は居た。かなり大柄な男であり、周囲を四人の側近で固めている。
「おう、連れてきたか」
「へいっ」
 俺を担いでいた賊たちは、頭の前に俺を降ろした。
「ほう、今回の女は肝が据わっているようだな。大抵は怯えるか、許しを請うものだがな」
 冷静に周囲を窺う俺を見て、頭は不思議そうな顔をする。
「単に恐怖で動けないだけじゃないですか?」
 子分たちは笑って言う。
「いや、目が落ち着いてやがる。何か嫌な感じだ」
 頭が探るように俺を観察する。
(もう少し、近づいて来い。一撃で殺してやる)
 俺は密かにそう思いながら、いつでも動けるようにこっそりと身構える。武器は、懐に忍ばせている短刀のみ。失敗は許されない。
 しかし、頭はあまり近づいて来なかった。
「どうも変だな。この女、お前らにくれてやる! 存分にやっちまっていいぞ」
「お頭、いいんですか!」
 頭の言葉に、数人の賊が歓声をあげた。
(こうなったら!)
 俺は素早く地面を蹴り、一気に頭に突っ込んで行った。
「お頭っ!」
 賊たちが叫ぶ。しかし、誰も急のことで動けない。それは頭も同じだったようで、あっさりと俺に腹を刺されて倒れた。
「……ぐっ、女……貴様」
 頭は状況を理解すると、俺を睨みつけた。
「悪いな。俺、女じゃねえんだ」
 俺は素顔を晒し、頭に止めを刺した。
「賊だっ! 賊が出たぞっ!」
(おいおい、自分らを差し置いて賊呼ばわりかよ……)
 頭を討たれた者どもは騒ぎ出す。もちろん、見逃す筈がない。下手に抵抗される前にと、劉禅は近くにあった刀を手にして賊を斬って回る。
 しかし、その場に居た賊全員は討ち取れず、一人を逃がしてしまった。


「そろそろ行きましょう」
 普浄は、村の若者百人とともに賊のアジトへと向かった。
 道は、劉禅が目印を密かに落としていたから迷うことは無かった。彼らは迷うことなく洞窟の近くまでたどり着いた。
「行きますよ」
 時間から考えて、そろそろ劉禅が内部で暴れている頃だろう。あまり突撃が遅くなると、劉禅が本当に死んでしまう。
 普浄は先頭に立って洞窟に突っ込んでいった。
「何だお前らは!」
 洞窟内部に入った直後、武装していた賊が普浄達を見咎めた。普浄は答えることなく、その賊を棒で叩き伏せた。
「見事に入り組んでますね」
 洞窟内部に突入するが、分かれ道がいくつもあり、まるで迷路のようだった。
「……これは、劉禅殿を探すのに手間取りそうですね」



[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ