PHASE-01 「会敵」
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いえ撃っちゃってるし、アスランに説教くらうのは覚悟しとかないとな」
ははっ、と力なく笑うシン。優しくも厳しい上官の事を考えて、少しでも気を紛らわせようとしていた。
無論、状況が絶望的である事をシンは認識している。
自らの場所を発信していたインパルスは既に失われ、敵中に孤立。挙げ句、敵施設に逃げ込んでいる始末である。
良くて捕虜、悪ければ……。
その先を考えないようにしながら、シンは歩き出した。
闇に包まれた施設内を、月明かりだけを頼みにして。
◇
「ちくしょう、ここまでかよ――っ!」
逃げ込んだ先は行き止まり。もはやこれまでか、とシンは思った。
思いの外、追跡部隊の行動は遅かった事が、施設があまりにも広く、シンは通信設備を見つけられずにいた。
そこで、探している内に上階に行き、そしてそこで敵に発見される。
シン自身、間抜けな奴だと自分に呆れてしまったが、とはいえ、そう余裕がある訳でもなく、即座に逃走を開始した。
しかし施設一階に逃げ、廊下の曲がり角を曲がった先は、運悪く行き止まり。
振り返れば、数人の敵兵の銃口がシンを狙っていた。
MS同士の戦闘では、基本的に相手の姿は見えない。兵士にとって、殺す相手の姿が見えない事は大きな救いである。
だが、今のシンの目の前に居るのは生身の人間だった。
自分の右手に握られた銃を撃てば、懐のナイフで斬りつければ、その時点で相手の命を奪う。
前大戦での最強のパイロット、キラ・ヤマトは不殺の信念で戦っていた。
しかし、シンは違う。これまで、その手で数多の命を奪ってきた。
無論、人殺しが好きという訳ではない。彼自身、家族や想いを通わせた女性を失っている事から、生命がいかに尊い物なのか理解している。
とはいえ一度、戦場に立ったときに全てを救える訳がない。
そんなこと考えるのは、ただの傲慢であるとシンは思っている。
だからこそ、自分が奪った命の責任を、兵士は一生背負っていかなければならないのだ。
だが、意味のない殺生など自分は好まない。
この場は犠牲なしに、なんとしても突破する。
いや、出来る確信がシンにはあった。
「危害を加える気はない。抵抗は止めて、大人しくしろ」
中央の敵兵が警告をする。
それを聞きながら。シンは敵兵を見回した。
見たところ、軍事訓練は受けている様だが何処と無く見える素人臭さ。
全員、体格も随分小柄であり、筋肉質な所はボディアーマーを着ているとはいえ、全く見受けられなかった。
「………」
シンは無言で両手を挙げる。右手の銃は見せつけるように先に挙げて。
「それでいい。銃を床に置いて、両手を頭の後ろで組め」
―――なんだこいつら、素人か?
敵兵は全員ヘルメット
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